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2019/08/27

歌劇「ナブッコ」

「タンホイザー」に続いて、同じワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」を観てみたが、もうひとつピンと来なかった。バイロイト音楽祭のVHSビデオはテープが傷んでいて鑑賞に堪えず、メトロポリタンオペラは現代的なセットによる舞台に違和感が残った。音楽的には頻繁に登場する「トリスタン和音」が、矛盾を抱えたままの人間の心理的葛藤を窺わせるが、アリアや重唱は冗長な感じが禁じ得なかった。熱心なワグネリアンに叱られそうだが、極端に言えば「前奏曲と愛の死」だけ聴けば足りるような気がした。

ワーグナーではあと「ニーベルングの指環」4部作のビデオがあるけれど、これをちゃんと鑑賞するには十分な予習が必要と思われるので、また後日に譲ることにして、当面ヴェルディのオペラを年代順に観ていくことにした。手元にある最も初期のものが「ナブッコ」で、ヴェルディ3作目にして彼の出世作となった記念碑的作品である。

旧約聖書に題材を取り、バビロニア国王ナブコドノゾール(ナブッコ)がエルサルムに侵攻してソロモン神殿を破壊、多数のヘブライ人をバビロンに連行(バビロン捕囚)するが、その後ナブッコの2人の娘とエルサレム王の甥イズマエーレとの三角関係からバビロニア王家内の対立が深まり、ついにはナブッコに天罰が下って雷に撃たれ錯乱状態に陥るが、やがてナブッコ自身がヤハウェ神に帰依してヘブライ人を解放するという物語。後半部分はオペラを面白くするための脚色で、史実とは全く異なる設定なのだそうだ。

音楽的にはアンサンブル(重唱)や合唱の使い方が効果的で、とりわけ第3幕の合唱「行け我が想いよ、黄金の翼に乗って」は有名で、「第二のイタリア国歌」とも称されている。MET公演でも聴衆からひときわ大きな拍手喝采を浴び、指揮者レヴァインがそれに応えてこの合唱をアンコールでもう一度歌わせている。

タイトルロールのナブッコ役はプラシド・ドミンゴ。もう70代の彼だが、かつての「3大テノール」の一角が、今ではバリトンに声域を下げて役柄を変えつつ、50年以上にわたって現役で活躍を続けているのだ。

このあと、「マクベス」「ルイザ・ミラー」と観たが、ドミンゴは後者でも娘思いの父親役を好演していた。次はいよいよ中期の3大傑作オペラに入る。

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