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2019/05/15

タブレット譜面によるコンサート

というのを実際に初めて見た。といっても、テレビの録画放送なのだが、遂にそういう時代が本当にやって来たのかと感慨深かった。12日放送のNHKEテレ「クラシック音楽館」の最後「コンサートα」で取り上げていた、今年2月に紀尾井ホールで行われたベルチャ四重奏団のコンサートである。団体名は第1ヴァイオリン奏者の名前からとったもので、4人とも英国王立音楽大学で学んだ仲間だけれど、全員国籍が異なるそうだ。アルバン・ベルク四重奏団に師事したということで、若いメンバーながら実力は十分あるようだ。

彼らはタブレットの譜面で演奏するスタイルらしく、4人それぞれの前には10インチはあろうかという大きなタブレットが据え付けられ、メンバーは着席すると、持参したコントローラー(正確な名前は分からない)を足元に置いた。目を凝らすと「+」「-」という文字が見える。そこを足で踏むとページが進む、戻るという仕組みのようだ。本体とは Bluetooth で通信しているのだろうか。

弦楽器奏者は右手で弓を持つので、紙の譜面をめくるためには一旦弓を膝の上などに置くか、大切な弓を持ったままページを繰るという器用な動作を強いられる。オケでは2人でひとつの譜面台なので、相方がめくってくれるけれど、カルテットではそういうわけにいかない。だから足でめくれると便利だということは分かるが、パート譜は譜めくりのことを考えて製版してあるので、どうしてもタブレットでないとダメというわけではない。

そう思ってネットを検索してみて、実は彼らが見ているのはパート譜ではなくスコアだということが分かり、ようやく得心がいった。なるほど、楽曲の全体構成を皆が常時把握しながら演奏できるというメリットがあるわけだ。これを紙の譜面でやろうとしたら大変なことになるが、それを可能にしたのがタブレットという文明の利器なのだ。彼らも伊達や酔狂で新しがって使っているわけではないのだ。

もうひとつのメリットとして、ステージの照明を落とせるということがあるかもしれない。それによって奏者の集中力は高まり、また夏場でも暑くならないので汗かきの奏者は助かる。自ら発光するタブレットの譜面を使えば、ほとんど真っ暗な中でさえ演奏できるというわけで、この日の紀尾井ホールのステージ上はかなり薄暗い様子であった。

デメリットは・・・。うーむ、今のところ特に思いつかない。バッテリーが切れたり、コントローラーの動作不良など、あり得ないことではないけれど、おそらく対策は講じてあるだろう。あるとすれば、新奇なガジェットに関心がいくあまり、肝心の演奏をじっくり鑑賞するのを忘れてしまったということぐらいだ。(苦笑)

5月14、15日 ジョグ10キロ

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