『星めぐりの町』
2018年、実行委員会。黒土三男監督、小林稔侍主演。KINENOTE の紹介文。
妻を早くに亡くし、一人娘の志保(壇蜜)と二人暮らしの島田勇作(小林稔侍)。京都で豆腐作りの修業を積んだ勇作は、毎朝じっくりと手間と時間をかけて美味しい豆腐を作り、町の主婦や料理屋に届ける生活を続けていた。そんなある日、勇作の元に、警察官に付き添われ、東日本大震災による津波で家族全員を一瞬で失った少年・政美(荒井陽太・新人)がやって来る。政美は、勇作の亡き妻の遠縁にあたるという。突然の不幸によって心に傷を抱える政美を、ただ静かに見守り続ける勇作。やがて自然に根差した自給自足の勇作との暮らしの中、薄皮が一枚、また一枚とはがれるように政美は少しずつ心を再生させていく。だが勇作が配達に出ている最中、町が大きな揺れに襲われ、一人で留守番をしていた政美は震災の恐怖がよみがえり、姿を消してしまう…。(引用終わり)
小林稔侍76歳にして初めての主演作品。豊田市郊外の山間部で豆腐屋を営む主人公は、薪の竈でご飯を炊き、囲炉裏で暖を取り、薪で焚く風呂に入るという昔気質、職人気質の人間である(台所に一応電子レンジらしきものはあるが)。
そこに東日本大震災で天涯孤独となった遠縁の少年がやって来るところから物語が始まる。閉ざされていた彼の心が次第に開かれ、再生へと繋がっていく過程を、あくまで淡々と、美しい自然と人々の素朴な暮らしの中に置きながら描いている。
豆腐づくりのノウハウとか、娘志保を巡る人間関係とか、本筋から離れたディテールに尺を割いている印象を受けるが、そういったもろもろの事象を含んだ、豊田での地に足がついた生活そのもの、質素ながら心のこもった食事などの一切合切が、実は少年の心の再生への重要な基盤となっていくのだ。
なお、タイトルの「星めぐり」もまた本編ストーリーとは無関係に思えるが、ラストで重要な役割を果たす「雨ニモマケズ」の宮澤賢治が作った「星めぐりの歌」から取ったものだろう。映画『あなたへ』で使われていたから、小林稔侍が恩人と仰ぐ高倉健へのオマージュを籠めたタイトルなのだろう。
5月19、21日 ジョグ10キロ
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