ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全集
ピアノソナタ全集に続いて、ベートーヴェンの創作過程のもうひとつの柱である弦楽四重奏曲全曲を、初めて通して聴いた。こちらもかなり以前にアルバンベルク四重奏団による全集盤を買い求めていたが、ピアノソナタ全集と同様、「ラズモフスキー」や「セリオーソ」など、標題がついた作品を適当に摘み聴きしていた程度だった。特に後期のものは難解という先入観が強かった。
CDのライナーノートで、評論家の門馬直美氏が「ベートーヴェンにとって最も身近に感じられ、心情を吐露しやすい楽器はピアノだった。しかし、ベートーヴェンは、人生の微妙な問題となると、弦楽四重奏に頼ることが多かった。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、交響曲や協奏曲などでしばしばみられるような、外部を意識した点が少しもない。すべて、外面的効果よりも、ベートーヴェンの心の奥深くからの声をきかせる」(抄録)などと書いているが、まさにその通りだと思う。
とりわけ、後期あるいは晩年のベートーヴェンの音楽については、弦楽四重奏曲なしには知ることができないという指摘は重要だ。最後のピアノソナタよりさらに後の最晩年に書かれた、第12番から第16番にかけての弦楽四重奏曲は、同時期の第九交響曲に聴く理想主義の熱狂とは対照的な、静謐にして内面的ないし瞑想的、哲学的ともいえる音楽が展開されている。しかし、その両者が表裏一体となったものが、ベートーヴェンの音楽の総体なのだとすれば、弦楽四重奏曲を聴かずして彼の音楽は語れないということになる。
ピアノソナタを含めて、これまで食わず嫌いだった彼の後期の作品も、今後は折に触れじっくり聴いていくことにしよう。年齢を重ねることで分かるということもあるが、何よりそれら長大な作品を聴き通せるだけの時間が確保出来ていることに感謝しつつ。
4月17日 ジョグ10キロ
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