『羊と鋼の森』
2018年、製作委員会。東宝配給。KINENOTE の紹介文。
北海道の田舎で育った外村直樹(山﨑賢人)は、高校でピアノの調律師・板鳥宗一郎(三浦友和)と出会う。彼の調律したピアノの音に生まれ故郷と同じ“森の匂い”を感じた外村は、調律の仕事に魅せられ、その世界で生きていこうと決意。専門学校に通ったのち、板鳥のいる楽器店で調律師として働き始める。いちばん年齢が近く兄のような存在である先輩・柳(鈴木亮平)に付きながら、調律師としての道を歩み始めた外村は、ある日、高校生姉妹、和音(上白石萌音)と由仁(上白石萌歌)に出会う。柳の調律したピアノを二人が弾くと、和音の音は端正で艶やかな音を奏で、由仁は明るく弾むような音色になるのだった。ときに迷い、悩みながらも、ピアノに関わる多くの人に支えられ、外村は調律師として人として逞しく成長していく……。(引用終わり)
本屋大賞を受賞した宮下奈都の同名小説を映画化。三浦しをん原作の『舟を編む』と同様、一般にはあまり知られていない職業に着目し、その仕事内容と苦労、やりがいなどを丁寧に描いた作品だけれど、どうしても地味な内容にならざるを得ないし、ストーリー的にも大きな盛り上がりはない。しかし、北海道の自然の美しい映像に加え、ピアノと自然音をうまくミックスした音声との相乗効果で、一篇の叙事詩を読むような美しく音楽的な作品に仕上がっている。
弦楽器であればボウイング、管楽器であればアンブシュアやリードなど、奏者自らの修練や工夫次第で楽器の音色はいくらでも変化するけれど、考えてみればピアノなど鍵盤楽器においては、奏者のタッチによる強弱やアタック(音の出だし)の変化はあるにせよ、楽器の音色そのものや響き方まではコントロールできないのだ。
その重要な部分を担っているのがピアノ調律師なのだ。長年クラシック音楽を聴いてきた自分だが、お恥ずかしながらピアノの調律師とは、楽器の音程のチューニングをする人のことだと思っていた。それももちろんあるが、打鍵メカニズムを調整する「整調」や、音色を調整する「整音」も、その仕事の重要な一部なのだ。
オーディオのグレードアップでピアノの音もより深く味わえるようになり、このところピアノ音楽への関心がにわかに強まっているが、そのウラには目に見えない調律師の仕事があるわけだ。映像での表現には限界があるけれど、本作を通じてその苦労の一端を窺い知ることは出来た。
4月11日 ジョグ10キロ
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