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2019/03/07

『生きる』

Ikiru1952年、東宝。黒澤明監督。志村喬主演。allcinema の紹介文。

市役所の市民課長・渡辺勘治は30年間無欠勤のまじめな男。ある日、渡辺は自分が胃癌であることを知る。命が残り少ないと悟ったとき、渡辺はこれまでの事なかれ主義的生き方に疑問を抱く。そして、初めて真剣に申請書類に目を通す。そこで彼の目に留まったのが市民から出されていた下水溜まりの埋め立てと小公園建設に関する陳情書だった……。(引用終わり)

黒澤作品をちゃんと観たのは、実は今回が初めてである。日本映画界最高の巨匠だとか、「世界のクロサワ」だとか、大仰な言葉で評価されるものへの本能的な抵抗があったけれど、まあ死ぬまでに一度観ておいてソンはないかと思った。

それまで、事なかれ主義を地で行くような公務員だった主人公が、当時は不治の病とされた胃癌に侵されていると知ってから、初めて人生の意義を知り、残された余命を懸命に生き切ろうとする。まもなく死ぬと分かってはじめて、彼は「生きる」ことが出来たのだ。背後で流れるハッピーバースデーの歌が象徴的だ。

その皮肉だけでも痛切極まるが、彼の通夜の席で語り合ううちその功績を痛感し、彼に倣って市民への貢献を誓い合ったはずの同僚たちが、現実の職場に戻るとあっさり旧弊に復してしまうという、さらに強烈な皮肉で映画のラストが締めくくられている。

ところで、だいぶ前に観た『最高の人生の見つけ方』という洋画も、余命半年を宣告された主人公2人の生き方を扱った作品だったが、やりたい放題の享楽を尽くすところまでは本作と共通しているものの、今まで真剣に取り組んでこなかった仕事に本腰を入れる、なんていうことには絶対にならない。そこは日本と欧米の文化や労働観の違いなのだろう。

3月5日 LSD40キロ

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