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2019/03/28

ベートーヴェン ピアノソナタ全集

4781821 1992年から96年にかけて録音された、アルフレッド・ブレンデルによるベートーヴェンのピアノソナタ全32曲を初めて通して聴いた。だいぶ前に全集盤を買い求めていたが、3大ソナタなどを適当に摘み聴きしていた程度で、せっかく全集を買った意味がない状態が続いていた。迫力ある音響や多彩な音色の変化を楽しめる管弦楽曲に比べ、ピアノ1台による演奏では飽きるという先入観があり、なかなか手に取る機会がなかった。

今になって考えると、スピーカー買い替え以前の再生環境では、本来のピアノの音が鳴っていなかったという気がする。弦楽器や管楽器と違い、打鍵した瞬間から減衰するピアノの音の再生は特有の難しさがあるのだろう。さらに、同時に奏でられる複数の音が楽器の筐体内で相互に共鳴し、あるいは干渉して生まれる非常に複雑な音空間を再現するのは容易ではない。

しかし、それがきちんと再生されなければピアノ音楽を十分に楽しむことは出来ないし、ましてや作曲当時まさに発展途上にあったピアノという楽器の可能性を極限まで追求したベートーヴェンの意図を聴き取ることは難しかろう。

それが昨秋以降スピーカーを新調してアンプのメンテをして以来、再生音のクオリティが飛躍的に向上し、ピアノについてもこれまでとは次元の異なる音質で再生されるようになった。ピアノの音は決して平板なものではなく、艶と深みをもった音色は奏者のタッチによって千変万化し、立体感や奥行きのある残響となってホールを満たす。これまで聴いていたのは一体何だったのかという思いだ。

というわけで、もちろん一気にではないけれど、全32曲を通して聴いていて、全く飽きるということがなかった。まだハイドンやモーツァルトの影響を脱していない初期の作品から、次第に彼自身の語法を確立し、楽曲構成においても様々な革新的試みを続け、ついには後期のソナタにおける高みに到達した彼の創造の過程を、たいへん興味深く辿ることが出来た。

次は弦楽四重奏曲全集に挑戦しようと思っている。どんな発見があるだろうか。

3月26、28日 ジョグ10キロ

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