14年の空白
「年金と空白期間」つながりで、もうひとつ。こちらは確定拠出年金についてである。
最近は個人型の iDeCo (イデコ)が節税商品として人気を集めているようだが、自分の場合は勤務していた会社の企業型確定拠出年金を、退職に伴って個人型に移換したものである。
確定拠出年金(以下「イデコ」と略す。)の老齢給付金は、60歳以降70歳までの間に請求手続きが出来るが、受取方法としては一時金、年金またはその併用という3通りから選択する。就労の有無、資産や収入の状況などにより、どの受取方法が最適なのかは人それぞれだ。
ただし、税や社会保険料の負担については、一時金と年金で大いに事情が異なることに留意が必要だ。年金受取だと、公的年金と同様に雑所得となり、それに上乗せされる形で総合課税され、所得税および住民税の負担が増加する。さらに、国民健康保険料など社会保険料の算定基礎にも反映して保険料が増加する。
それに対し、一時金は退職所得とみなされ、勤続年数に応じた退職所得控除の適用対象となるうえに、同控除後の金額の2分の1だけが課税対象となり、他の所得と切り離して所得税・住民税が課される(分離課税)。退職金は税制上かなり優遇されているのだ。それにも増して、社会保険料の算定基礎に反映しないのが大きい。
従って、先に「人それぞれ」と書いたけれども、厚生年金からもある程度の年金を受給する場合などでは、社会保険料の負担増加を嫌って、イデコは一時金支給を選択するケースが多いものと思われる。
ところが、退職所得控除の適用「対象」となると書いたところが実は問題で、会社を退職した時点で退職金を受け取った人は、そちらで既に退職所得控除が適用されているため、そのメリットを二重に享受することができず、イデコの一時金全額の2分の1が課税対象となる可能性がある。それでも、総合課税に比べれば税負担は軽いし、何より社会保険料に反映しないだけでもマシである。
で、ようやくここからが本題だが(笑)、前に会社の退職金を受け取った人が、イデコ一時金受給の際にも、再び退職所得控除を使えるという抜け穴が実は存在するのだ。それが、自分が勝手に「14年の空白」と名付けたものである。
所得税法施行令第70条によれば、イデコの一時金を受け取る前年以前14年以内に退職所得がある場合は、簡単に言えば両者のもととなる勤続期間のうち重複する部分が除外され、イデコの一時金には退職所得控除が全くあるいは一部しか適用されない結果となる。しかし、これは裏を返せば、前の退職所得を受給した翌年から数えて14年間が経過した次の年からは、退職所得控除が再び全額適用されるということである。
そこで計算してみると、自分が退職したのは2013年だから、2014年から2027年までの14年を挟んで、2028年からは退職所得控除の適用が再び可能となる。しかも、その年に自分は70歳になるから、イデコの給付金請求期間の最後の年に当たっている。
14年という期間がどういう想定に基づいて算定されているのか分からないが、自分の場合はまさにドンピシャで「14年の空白」を置くことができるのだ。勤続年数は32年だったから、控除金額は1640万円である。つまり、1640万円まで全く非課税で、それを超えた部分の2分の1が分離課税されるということである。これを使わない手はない。
そこで、先日、イデコの事務をしている某信託銀行の支店に相談に行き、この点を確認してみた。窓口の女性もその偶然に驚いていたが、やはり滅多にないケースらしく、専門の部署に電話して確認してくれた。支店の中に先客として柳沢慎吾と真田広之がいたら、「何でいるんだよ!」と言ってやりたかったが、いるはずはない。(笑)
もちろん、今後10年間に税制改正があって、その規定が変わる可能性はあるし、それまでに年金資産が目減りするおそれもある。そもそも、自分が70歳までに死んでしまう可能性だってあるわけだが、今のところそれらを考慮してもなお、退職所得控除が再度適用されるまで我慢するメリットの方が大きいと判断した。
2028年にようやく受け取るイデコの一時金を、老人ホームの頭金の一部にでもしようかと、今から思案している2018年の年末なのである。(笑)
12月5日 ジョグ10キロ
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