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2018/06/27

『利己的な遺伝子』

Selfishgene_2リチャード・ドーキンス著。1976年初版刊行。版元の紹介文。

私たちはなぜ、生き延びようと必死になり、恋をし、争うのか? 本書で著者は、動物や人間の社会で見られる、親子間の対立や保護行為、夫婦間の争い、攻撃やなわばり行動などがなぜ進化したかを、遺伝子の視点から解き明かす。自らのコピーを増やすことを最優先にする遺伝子は、いかに生物を操るのか? 生物観を根底から揺るがし、科学の世界に地殻変動をもたらした本書は、1976年の初版刊行以来、分野を超えて多大な影響を及ぼし続けている古典的名著である。(引用終わり)

「利己的な遺伝子」の概念について、断片的には聞きかじっていたものの、ドーキンス自身の著書を手にしたのは初めてである。決して読みやすい本ではない。本文だけで416頁もあるうえに、文章は独特のレトリックに満ちていて、ともすれば途中でついて行けなくなりそうになる。池上彰氏あたりに分かりやすいダイジェストを作ってほしいと真剣に思った。(苦笑)

しかし、とにかく全体を読み通してみて、やはり一度は読むべき名著であることを実感した。コペルニクスの地動説、ダーウィンの進化論にも匹敵しうる科学革命であるのみならず、社会や宗教、倫理など広汎な分野に大きな影響を及ぼしているに違いない。

本書の要点をうまく纏めることは私の手に余るが、要するに生命というものの本質は、自分のコピーを作る「自己複製子」であるということ。その進化したものがDNAで、生物の身体とは畢竟DNAが生き延びるための乗り物(ヴィークル)に過ぎない。生物が子孫を残すためにDNAが存在するのではない。逆なのだ。

親子間の対立や夫婦間の争い、一見利他的に見える行動に隠された遺伝子の利己性。いずれも「目から鱗」の鮮やかな解明に驚くばかりである。

実は本書を読んでみようと思ったのは、最近東京で起きた幼児虐待事件がきっかけで、その原因は遺伝子レベルで解釈できるのではないかと思ったからだ。この種の事件では、ほとんどの場合、母親と前の夫との間の幼い子が新しい夫に暴行されるというパターンである。血の繋がりのない夫はともかく、母親までが自分の腹を痛めた子への暴力を黙認、場合によっては加担までするのはなぜなのか。

本書にその直接の解答はない。しかし、ヒントとなる記述はあった。あえて擬人的表現を使えば、新しい夫が前の夫より優れた遺伝子を持つと考えた母親の遺伝子は、新しい夫との子作り、子育てを優先するため、まだ手のかかる前夫との子に労力を使うのは避けようとする傾向があるのではないか。それが高じることで、連れ子に対する暴力という悲しい事態(遺伝子にとっては合理的な選択)を招くのだろう。

再婚した母親に連れ子がいる場合、潜在的には常にその危険性があると考えられるので、児童相談所などの関係機関が定期的にチェックするなど、よりキメ細かく対応することが必要ではないか。

6月25、27日 ジョグ10キロ

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