『虹色天気雨』『ビターシュガー』
大島真寿美著。後者は「虹色天気雨2」の副題があり、前者の続篇に当たる。アマゾンの紹介文。
早朝に電話で起こされ、幼なじみの奈津の一人娘・美月を理由もわからぬまま預かることになってしまった市子。家に連れてこられた美月から、奈津の夫・憲吾が行方不明となり、奈津が憲吾を捜しに出かけたことを知らされる。二日後、戻ってきた奈津は心当たりの場所をすべてまわったが憲吾を見つけられなかったと語る。憲吾の失踪には女性が関係しているとにらむ市子と奈津のまわりには続々と仲間が集まってきて…。女性たちの友情を描いた名作小説。(『虹色天気雨』)
前作『虹色天気雨』から数年後。市子、奈津、まりの三人は、中学、高校からの二十年来の付き合いを続けている。モデルをやめて専業主婦になった奈津は、失踪騒ぎを起こした夫・憲吾と別居、娘の美月と二人で暮らしている。キャリアウーマンのまりは年下のカメラマン・旭との恋愛に疲れ、別離を選んでいた。市子はあいかわらず執筆業を続けていたが、ひょんなことから、まりの恋人だった旭が彼女の家に転がり込んできたことから、市子、奈津、まりの三人の関係に微妙なほころびが生じることになる…。連続ドラマ化もされたアラフォー女性の恋愛&友情小説。(『ビターシュガー』)(引用終わり)
何らかの関係性がある複数の女性が主人公、そのうちの誰かの夫(父)が突然失踪するという設定は、この著者お得意のパターンだが、本作では中学以来20年来の付き合いを続けるアラフォー女性3人を巡る「くっついたり離れたり」の人生模様を、淡々と、しかしいつもながらの温かい眼差しで描く。
作中では市子が語り手となって物語が進んでいくが、彼女や周囲の人の発言と彼女の内的な思考が混然一体となった、一種の饒舌体とでも言うべき特異な文体で、読者は常に彼女の主観を通して、様々な出来事を追体験していくことになる。
しかし、それが決して押し付けにならず、「うんうん、そうだねー」と同感できる箇所が多いのは、市子の(つまりは著者の)冷静な観察眼、大人の感覚によるのだろう。失踪や離婚といった人生の一大事を扱いながら、決してドロドロの愛憎劇に陥ることなく、爽やかな読後感を与えるのは、その語り口の巧さゆえなのだと思う。
2月18日 LSD20キロ
2月20日 ジョグ10キロ
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