『三月』
短大を卒業してからおよそ20年。同窓会の案内を受けとって以来、ノンは学生時代に亡くなった男友達のことが気になりはじめる。彼は自殺ではなかったのではないか? ノンは仲のよかった友人に連絡を取ると―。仕事や家庭、それぞれの20年の時を歩んできた女性6人。学生時代の男友達の死を通じて明らかになる「過去」。その時、彼女たちが選ぶ道は―。未来に語り継ぎたい物語。(引用終わり)
本作もまたアラフォー女性たちを主人公(それも6人!)とし、2012年から翌年にかけて『小説宝石』に連載された連作短篇6篇からなる。
当時自殺として処理された男友達(森川雄士)の死を巡る驚愕の真相が最後に明かされる…といった展開を予想していたが違っていた。状況から考えてやはり自殺だったと思われるが、それが本作のテーマなのではない。
森川が夢に現れたというノンが領子にかけた1本の電話から始まるストーリーは、学生時代の女友達6人それぞれのその後の人生模様を次々と炙り出していく。ある者は子連れ男性と結婚したものの、「砂上の楼閣」のような家庭生活に不安を感じている。またある者は大きな災害で生活環境が一変、遠距離交際していた男性とも別れてしまう。
ほんのちょっとしたことで、人生って大きく変わってしまうものでしょう。これから先だって、ほんのちょっとしたことで大きく変わってしまうんだと思うのよ。(185-6頁)
1995年、2001年、2011年と、内外で続いた大きな災害、事件を背景としているけれども、彼女たちは過酷な状況にも絶望することなく、自分の人生に正面から向き合い、前に進んで行こうとしている。
三月。
別れの季節は、始まりの季節でもある。(191頁)
長い夜が明けたらまた朝になる。
また、朝になる。(232頁)
どこか清々しささえ感じる結末は、さすがにこの著者ならではの味わいである。
2月22、23日 ジョグ10キロ
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント