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2018/01/09

『やがて目覚めない朝が来る』

9784591100011大島真寿美著。版元の紹介文。

元舞台女優の祖母のもと、魅力的な人たちに囲まれて私は大人になった――同じ時を生きるかけがえのなさが描き出され、読後には温かな感動が胸に満ちる物語。(引用終わり)

気がつくとこの作家の本は4冊目である。何らかの関係性をもつ複数の女性が主人公(群)である場合が多く、主たる読者層は若い女性だろうと勝手に想像しているが、独特の世界観にオジサンもどこか惹かれるのだ。(笑)

本作も例外ではなく、私「有加」と父方の祖母「蕗さん」を軸に、母「のぶちゃん」、蕗さんの元マネージャー「富樫さん」、衣裳デザイナー「ミラさん」など、有加をとりまく人々のそれぞれの人生模様が淡々と、しかし温かい目で描かれる。

とりわけ、タイトルからも想像がつくように、それぞれの人物の「死にざま」こそが、本書の主たるテーマではないかと思う。ある者は不慮の事故で、ある者は有加に貴重な財産を遺し、ある者は最後まで昔の恋人を思いながら、ある者は「自分が死んでも悲しむな」とひっそり逝く。

中でも、元女優に相応しく、気高く美しい蕗さんの死には大変感銘を受けた。「やがて…」という言葉も作中、蕗さんが漏らした台詞であるが、人間すべからくいつかは死ぬ。そうであれば、どう死んでいくかこそ、その人の人生の総決算なのだと、改めて痛感させられる作品である。

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