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2017/09/04

『二重生活』

Doublelife2016年、製作委員会(フィルムパートナーズ)。門脇麦、長谷川博己他。公式サイトの紹介文。

大学院で哲学を学ぶ平凡な学生、珠。同棲しているゲームデザイナーの恋人、卓也との日々は、穏やかなものだった。ところがそんな毎日は、担当教授から修士論文の題材に“哲学的尾行”の実践を持ちかけられたことで一変する。それは、無作為に選んだ対象を追ういわば“理由なき尾行”。半信半疑ではじめた、隣人、石坂への尾行だったが、彼の秘密が明らかになるにつれ、珠は異常なほどの胸の高鳴りを感じ、やがてその禁断の行為にのめりこんでいく―。(引用終わり)

小池真理子の同名小説の映画化。「哲学的尾行」というのは、フランスの女性アーティスト、ソフィ・カルのアイデアというが、ここでは「尾行」という行為そのものより、むしろ、多かれ少なかれ誰しもが抱えている「秘密」と、その露見がテーマという気がする。珠の修士論文に次のような文章がある。

平凡で穏やかで、裏切りも隠し事も嘘もない、ひたすら公平な愛だけで満たされている人生なんてどこにもない。人は苦しみからも逃れられない。ほんの少し、その苦しみを軽くしてくれるもの。きっとそれが秘密である。

近所でも評判のセレブ一家の主である石坂と、余命2か月の老母を抱える担当教授の篠原が珠の尾行対象となるが、それぞれ意外な秘密を抱えていることが分かる。珠自身もまた、秘密にしていた尾行行為を卓也に知られてしまう。そうした「二重生活」の露見が、珠の生き方に大きな影響を及ぼすことになる。

しかし、それは決してネガティブなものではなく、過去の恋人との経緯を引き摺って、卓也とさえ表面的な付き合いしか出来なかった珠を、一歩前に踏み出させるものとなる。ラスト近くで、至近距離で歩いている卓也に全く気付かず、また尾行していた(?)篠原の姿を一瞥しただけで、微笑みながら再び歩き始めた彼女の姿に、新たな人生のスタートが感じられた。

門脇麦が「本当にどこにでもいそうな平凡な女子大生」を好演。リリー・フランキーの人生を達観したような哲学教授ぶりも良かった。また、背景の雑音でしかなかった隣人の話し声や救急車のサイレンが徐々に大きくなって、次の展開に繋がっていく音声処理が面白かった。

9月4日 ジョグ6キロ

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