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2017/07/12

『ハドソン川の奇跡』

Sully2016年、米。クリント・イーストウッド監督。トム・ハンクス主演。公式サイトの紹介文。

2009年1月15日、極寒のニューヨーク上空850mで155名を乗せた航空機を突如襲った全エンジン停止事故。160万人が住む大都会の真上で、制御不能の70トンの機体は高速で墜落していく。近くの空港に着陸するよう管制室から指示がある中、機長サリーはそれを不可と判断し、ハドソン川への不時着を決断。事故発生からわずか208秒のことだった。
航空史上誰も予想しえない絶望的な状況の中、技術的に難易度の高い水面への不時着を見事に成功させ、“全員生存”の偉業を成し遂げる。その偉業は「ハドソン川の奇跡」と呼ばれ、サリーは一躍英雄として称賛される――はずだった。
ところが――機長の“究極の決断”に思わぬ疑惑が掛けられてしまう。本当に不時着以外の選択肢はなかったのか? それは乗客たちを命の危険に晒す無謀な判断ではなかったのか? 事故調査委員会による度重なる追及は、サリーを極限まで追い詰める……(引用終わり)

実際に起きた事故の一部始終を当事者目線でリアルに再現し、併せて、あまり表面化しなかった、機長に対する責任追及の様子を描いた、第一級のドキュメンタリー映画である。イーストウッド監督は本作の製作に当たって、事故機と同型のエアバスA320を1機購入したそうで、おかげで大変迫力のある映像に仕上がっている。

むろん、事故のシーンは、機長の悪夢に出てくるマンハッタンのビル街への墜落風景を含め、すべてVFXによる合成映像である。ハドソン川に着水後、複数のフェリーボート等が救助に当たるシーンは、真ん中の飛行機のスペースを空けて船だけ実写で撮り、そこに飛行機の映像を嵌め込んだそうだが、後からそう知って驚くほどの出来栄えだ。

NTSB(運輸安全委員会)の抱いた疑惑は、シミュレーションによれば出発したラガーディアもしくは近隣の空港に安全に着陸できたという点と、左エンジンは完全には停止していなかった可能性があるという点である。

これらに関して、いずれも明確に否定する機長側との間で繰り広げられる応酬は、大変見応えがある。NTSBのメンバーは意地が悪いような印象を与えるが、いわゆるディベートと同じように、個人的な意見は別にして、ある物事を弁護する側と批判する側に分かれて徹底的に議論することが、正しい結論を導き出すという考え方によるのだろう。

ところで、トリビアネタをひとつ。サリー機長が事故機に搭乗する直前、ラガーディア空港の売店でツナサンドを買う場面があり、その売店の名前が Hudson News となっている。後にハドソン川に着水して大ニュースになることの暗示と取れるかもしれないが、これはアメリカの空港の多くで見かける店名で、事故との関連は全くの偶然である。それとも、事故に引っ掛けてわざわざ画面に映し込んだのだろうか。(笑)

7月10、12日 ジョグ10キロ

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