『スワロウテイル』
1996年、製作委員会。岩井俊二監督。三上博史、Chara、伊藤歩、江口洋介他。ウィキペディアの紹介文。
"円"が世界で一番強かった時代。一攫千金を求めて日本にやってきた外国人達は、街を"円都(イェン・タウン)"と呼び、日本人達は住み着いた違法労働者達を"円盗(イェン・タウン)"と呼んで卑しんだ。そんな円都に住む、円盗たちの物語である。
少女・アゲハ(伊藤歩)は、円都の娼婦であり唯一の肉親である母が死んでしまい、行き場がなくなってしまう。母の同僚の無責任な大人達にたらい回しにされる中、娼婦グリコ(Chara)の元に引き取られる。胸に蝶のタトゥーをつけ美しい歌を歌うグリコは、それまで名前がなかった彼女に"アゲハ"の名前を与える。グリコもまた、"円"を夢見て上海から日本にやってきた円盗だった。彼女の周りにいるのも、彼女と同じように円を求めて日本にやってきた円盗達だ。アゲハが彼らと共に過ごして数日経ったある日、アゲハを強姦しようとしたヤクザを誤って死なせてしまう。彼の体内には一万円札の磁気データが記録されたカセットテープが入っていた。
ひょんなことから一攫千金のチャンスを得た彼ら。データを元に作った偽札で儲け、グリコは歌手としての道を歩むが……。(引用終わり)
前に観た同じ監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』より20年も前に製作された作品だが、本作においてもやはり、先の全く読めないスリリングな展開、美術作品のような陰影深い映像、音楽を巧みに織り込んでいるところなど、どこをとっても独特の世界観に貫かれている。
近未来の架空都市「円都」を舞台に、偽札作りをめぐる裏社会の暗闘や、「円盗」たちの危うげなサクセスストーリーとその挫折、それらに巻き込まれる中での天涯孤独の少女アゲハの人間的成長を描いている。
そうした全体の筋書きもさることながら、個々のシーンのディテールがいちいち凄くて、大変なインパクトを与える(例えば、「阿片街」の凄絶な光景!)。自分としては珍しく、148分の長尺を一気に観終えてしまったが、機会があればもう一度観てみたいと思わせる作品である。
なお、タイトルの「スワロウテイル」はアゲハチョウの英語名 Swallowtail Butterfly から来ている。最初、アゲハの胸にグリコが悪戯で書いた芋虫が、蝶になって飛び立つさまを暗示しているのかもしれない。
6月10日 LSD20キロ
6月12日 ジョグ10キロ
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント