『シェルブールの雨傘』
1964年、仏。主演カトリーヌ・ドヌーヴ。音楽ミシェル・ルグラン。某映画祭の紹介文。
アルジェリア戦争ただ中のフランス。港町シェルブールの傘屋の娘ジュヌヴィエーヴ(C・ドヌーヴ)と工員の青年ギイ(N・カステルヌオーヴォ)は、将来を誓い合った恋人同士。だが、ギイに召集がかかり、別れを惜しみつつ戦場へ向かう。残されたジュヌヴィエーヴはギイの子を身籠っていた。しかし戦争が激化し、ギイとの連絡が途絶えてしまう。不安になるジュヌヴィエーヴに、彼女を見初めた宝石商カサール(M・ミシェル)が「僕たちの子として育てよう」と、結婚を申し出る。(引用終わり)
有名なテーマ曲以外、内容は全く知らなかったが、一見してこれはオペラそのものだと感じた。全体は3幕構成になっていて、美女役のソプラノと美男役のテノールが繰り広げる悲恋劇。アリアに当たるテーマ曲以外のセリフ部分は、話し言葉に節をつけたレチタティーヴォ(叙唱)で繋いでいる。
主役の二人は生活は貧しいがとても純真で、何だかプッチーニの『ボエーム』を観ているみたいな錯覚に襲われた。考えようによっては、紅涙を絞らしめる古臭いメロドラマに堕しかねないのだが、この映画の名画たる所以は、いろいろと新しい要素を盛り込んで、それをうまく調和させているところにあると思う。
例えば、オープニングで雨の中を行き交う人々を上から撮った斬新な映像は大変印象的だし、当時進行しつつあったモータリゼーションを巧みに取り込んでいる。さらには色彩の使い方や、ファッション(自分にはよく分からないが・笑)にも、新しい感覚が活かされているのだろう。
古くからあるストーリーでも、新しい感覚を取り入れれば、こんなに美しい映画に仕上がる。これを要するに、芭蕉が言った「不易流行」というものではないか。
3月30日 ジョグ10キロ
月間走行 200キロ
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