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2017/01/24

『日の名残り』

Remains_31993年、米。アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソン他。アマゾンの紹介文。

1958年。ダーリントン邸の老執事スティーブンスのもとに、以前共に屋敷で働いていた女性ミス・ケントンから一通の手紙が届く。懐かしさに駆られる彼の胸に20年前の思い出が蘇る。当時、主人に対して常に忠実なスティーブンスと勝ち気なケントンは仕事上の対立を繰り返していた。二人には互いへの思慕の情が少しずつ芽生えていたが、仕事を最優先するスティーブンスがそれに気づくはずもなかった。そんな中、ケントンに結婚話が持ち上がる。それを知ったスティーブンスは激しく動揺するが…。(引用終わり)

「執事」という職業は、いかにも貴族社会のヨーロッパならではのもので、普通の日本人には全く縁遠い存在であるが、その仕事内容やプロ意識の一端に触れられただけでも、たいそう興味深かった。

スティーブンスは人手不足を補うため、経験者である自分の父を雇うよう働きかけ、暫くは一緒に働くことになるが、重要な会合の最中に父は屋敷内で急死する。しかし、彼は父の死に顔を一瞥しただけですぐに仕事に戻る。そればかりか、診察した医師に対し、もうこちらは済んだからと、フランス人客の足を診てもらうよう依頼するのである。

そうしたプロ意識に徹した彼のことだから、ミス・ケントンの存在が気になっても、自らの気持ちに封印するかのように、すげない態度をとり続けることになる。それでも、「忍ぶれど色に出でにけり」ではないが、ちょっとしたしぐさや表情にそれが滲み出てしまうところが、本作品の見所ではないだろうか。

『羊たちの沈黙』では底知れぬ恐ろしさを秘めたハンニバルを演じたアンソニー・ホプキンスが、ここではもう生まれながらの執事としか思えない好演を見せている。相手役のエマ・トンプソンもイギリス演劇界出身のベテランらしい達者な演技だ。さらに、『スーパーマン』のクリストファー・リーブがアメリカの議員役で出演。落馬事故後に撮影された特典映像のコルセット姿が痛々しい。

ところで、原作者はカズオ・イシグロという小説家である。長崎生まれの日本人だったが、父親の仕事の都合で幼少期に英国に移住、後に帰化したそうだ。貴族階級の生活ぶりや大戦間の欧州情勢などが詳細に記述されており、もう完全に向こうの作家として活躍しているようだ。

1月23日 ジョグ10キロ

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