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2016/10/03

『髪結いの亭主』

Coiffeuse_21990年仏。パトリス・ルコント監督。ジャン・ロシュフォール、アンナ・ガリエナ。アマゾンの紹介文。

少年時代に豊満な女性理髪師に憧れたアントワーヌは、以来、女の理髪師と結婚する夢を抱き続けてきた。中年を迎えた彼はついに美しい女性マチルドに出会い、見事、理髪店の主人に収まることに。人間味に溢れた顧客たちにも恵まれ、愛に溢れた10年がすぎるが、ある雷雨の日、マチルドは……。(引用終わり)

だいぶ前に書いた記事にあるように、散髪に行けば少なくともその日は気分良く過ごすことができる。まして、髪を切ってくれるのが色っぽい女性だったとしたら、アントワーヌ少年ならずともそこは地上の楽園のように映るだろう。

長じてもその夢を強く念じ続けることで叶えた彼は、働きもせずどこにも出かけず、日がな一日、理髪店の待合ベンチでクロスワードをしながら、女房の働きを眺めて暮す。日本でも半ばやっかみを籠めて言われる「髪結いの亭主」を地で行く生活を続けるのである。稼業への貢献と言えば、お得意のアラビア風ダンスでむずかる子供客をなだめることぐらいだ。

以下、ネタバレを含む感想。

10月1日 ジョグ10キロ

しかし、そんな生活も、ある雷雨の日に愛を交した後、買い物に行くと出かけたマチルドが、増水した川に飛び込み自殺することで、呆気ない幕切れを迎えてしまう。彼女は、「あなたが死んだり、私に飽きる前に死ぬわ/優しさだけが残っても、それだけでは満足できない/不幸より死を選ぶの」などと綴られた遺書を残していた。

自らの過去をほとんど語ろうとせず、ちょっと謎めいた存在のマチルドだが、もしかすると過去に色々と不幸な経験があって、それらを克服する意味でも、アントワーヌとは最初からそういう形で終わる愛を求めていたのではないか。愛の頂点で美しいままこの世を去ったマチルドと、取り残されて呆然自失の態のアントワーヌ。その対比の鮮やかさ。そして、何よりアンナ・ガリエナの妖艶さが、この作品の魅力だろう。

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