やれば出来るじゃない
去る13日にEテレ「クラシック音楽館」で放送された、スクロヴァチェフスキ指揮読売日本交響楽団のブルックナー交響曲第8番を視聴した。今年1月21日、東京芸術劇場で行なわれた特別演奏会である。演奏は大変立派なものだったが、今回書きたいのはそのことではない。
楽曲が終わったときの聴衆の反応である。以前にも書いたように、我が国のコンサートでよく見られる、残響が消えるまで待たずに飛び出す野蛮な「ブラボー」と拍手を苦々しく思っていたのだが、今回に限ってはそれがなく、指揮者がタクトを下ろすまでの数秒間、沈黙が保たれていた。やれば出来るじゃない。
思うに、あの「フライング・ブラボー」は、歌舞伎の「成駒屋!」といった掛け声と同じようなものなのかもしれない。曲が終わるや否や、間髪入れずに「ブラボー」と叫ぶのが、クラシックの「ツウ」だと勘違いしているのではないか。
楽団側もパンフレットに「拍手は指揮者がタクトを下ろしてからお願いします」などと注意書きを入れるようになったが、その成果がようやく現れてきたのかもしれない。ただ、今度はタクトを下ろした瞬間に、何人もの「ブラボー」が同時に飛び出す。「ツウ」の人たちが今か今かとタクトを必死で見つめているのが想像できて可笑しくなってしまう。本当は夢から醒めたみたいにパラパラと拍手が起こって、次第に大きな歓声に包まれるというのが良いのだが。
それでも、フライングされるよりはマシだ。日本人の中でも特に同調圧力が強いと思われる東京圏の人々の間に、この習慣が根付くのも案外あっという間かもしれない。
3月16日 LSD40キロ
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント