『柘榴坂の仇討』
安政七年(1860年)。
彦根藩士・志村金吾(中井貴一)は、時の大老・井伊直弼(中村吉右衛門)に仕えていたが、雪の降る桜田門外で水戸浪士たちに襲われ、眼の前で主君を失ってしまう。両親は自害し、妻セツ(広末涼子)は酌婦に身をやつすも、金吾は切腹も許されず、仇を追い続ける。
時は移り、彦根藩も既に無い13年後の明治六年(1873年)、ついに金吾は最後の仇・佐橋十兵衛(阿部 寛)を探し出す。しかし皮肉にもその日、新政府は「仇討禁止令」を布告していた。「直吉」と名を変えた十兵衛が引く人力車は、金吾を乗せ柘榴坂に向かう。そして運命の二人は13年の時を超え、ついに刀を交えるが…。(引用終わり)
元々文庫本38頁の短篇である浅田次郎の原作を元に、脚本を何度も改稿するなどして2時間の映画に仕上げたそうである。桜田門外の変に題材を取っているものの、金吾や十兵衛らの登場人物は浅田氏の創作による。
何といっても中井貴一の静謐な佇まいやセリフが、大失態を切腹で清算できないまま、恥を忍んで生き永らえなければならない武士の心情を窺わせ、映画全体をきりりと引き締めている。
クライマックスの仇討シーンの結末について、結果的にはそれが一番良かったと思うものの、では金吾の13年間の忍耐は一体何だったのかという思いは残る。実際のところ、過去からの訣別となるその結末を、金吾はある時点から決断していたに違いない。
それは秋元警部に説諭された時点かもしれないし、主君井伊直弼の言葉を思い出した時点かもしれない。あるいは「直吉」と名乗った理由を十兵衛自身から聞いた瞬間かもしれない。そのいずれかは、金吾の終始一貫して冷静な表情からは窺い知れないが、それはむしろ枝葉末節なのだろう。
十兵衛役の阿部寛のバタ臭い顔は若干違和感があり(似顔絵はそっくりだった・笑)、広末涼子も時代劇にはしっくり来なかったが、金吾の親友・内藤新之助役の高嶋政宏が意外に良かった。直弼役の中村吉右衛門はさすがの貫禄である。
2月4、6日 ジョグ10キロ
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