『黒い樹海』
仙台へ旅立った筈の姉が、意外や浜松のバス事故で急死! 身分証明書が不明のため知らせが遅れ、笠原祥子は事故現場へとんだが手がかりは無い。新聞社へ勤めた彼女は、姉の交友関係の男たちを追求中同僚の婦人記者と、事件の鍵を握る女性の相次ぐ殺人事件に――。マスコミに潜む人間悪を抉る推理の傑作。(引用終わり)
図書館で借りた文庫本の奥付には1973年初版、2002年第70刷とある。超ロングセラーなのである。最近の文庫ではまずお目にかからない1頁43字19行の小さな活字で452頁もの長篇だが、清張御大の「傑作」にしてこの程度かというぐらい、中身が非常に薄いというか散漫に感じた。
祥子と姉の仕事関係者として各界の著名人が6人も登場するが、いずれも怪しげな人物で、全員確たるアリバイがない。誰が犯人だか分からないミステリーと言えなくもないけれど(タイトルはそれに由来するようだ)、犯人の特定に繋がる重要な事実が伏せられていて、最後のタネ明かしまで読まなければ分からないのだ。
作品世界も、出版マスコミ業界や銀座界隈、そしておそらくは編集者同行での取材旅行という、いわば作家の日常空間にある材料だけで話を延々と引張るので飽きてしまう。昭和30年代という時代背景もあるが、それを考慮しても今日の推理小説に比べるといかにも見劣りがする。
と、文句ばかり書いてきたが、ではなぜ最後まで我慢して読んだのかと言えば、その理由はこれである(笑)。原作にとらわれない、今の時代に相応しい脚本を期待したい。
2月10、12日 ジョグ10キロ
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