« 『黄金狂時代』 | トップページ | 『ライムライト』 »

2015/12/13

『モダン・タイムス』

Moderntimes1936年米。チャップリン脚本、監督、作曲、主演。ウィキペディアの紹介文。

大きな製鉄工場で働くチャーリーは、スパナを手にひたすらベルトコンベアーを流れる部品にねじを回し続けるという単純作業を繰り返していた。その様子はテレビモニターで監視され、休む暇もなく働かされていた。ある日、チャーリーは労働者の食事時間を節約する自動給食マシーンの実験台にされる。しだいにチャーリーの頭がおかしくなり、歯車に巻き込まれたり、工員や社長の顔に油をかけたりするなど様々なトラブルを起こしてしまう。結局精神病院送りになった彼は、退院した矢先にトラックから落ちた赤旗を拾う。するといつの間にかデモ隊の先導をきってしまい、そのリーダーと間違われて捕まってしまう。拘置所に入るが、脱獄囚を撃退した功績で模範囚として放免される。造船所の仕事を紹介されたが上手くいかず辞めてしまい、街をうろつく生活に。

拘置所が恋しくなったチャーリーはわざと無銭飲食をして捕まえられるが、護送車の中でパンを盗んだ浮浪少女と出会う。護送車が急カーブで横転し、外へ投げ出されたチャーリーと少女は逃亡する。少女と意気投合したチャーリーは、2人のために家を建てるという夢を胸に一念発起とばかり働き出す。デパートの夜回り、工場の技師の助手と仕事を獲得するが結局駄目で、しかも2件とも警察沙汰になるという不運な結果に終わってしまう。その後少女が勤め始めたキャバレーのウェイターの職を得る。見世物の「ティティナ」を歌って大成功したが、少女の微罪のため、そこも追われてしまう。最後に2人は、現代社会の冷たさと束縛に囚われない自由な生活を求め、旅立っていく。(引用終わり)

冒頭に作品の解題のような言葉があり、字幕では「人間の機械化に反対して、個人の幸福を求める物語」としているが、これは意訳というより翻訳者の解釈だろう。原文は次のとおりだ。

゛Modern Times."  A story of industry, of individual enterprise --- humanity crusading in the pursuit of hapiness.

individual enterprise は「個人の企て」ではなく「個別企業」で、全体は「産業と個別企業の物語、すなわち幸福追求の聖戦に参加する人類の物語」というのが文字通りの意味だと思う。産業や企業は本来、人間の幸福追求に資するものであるはずだという、痛烈な皮肉が籠められていると考えるべきではないか。

それはともかく、T型フォードに代表される大量生産システムが本格的に始まったばかりの20世紀初頭に、早くもその問題点、矛盾と限界を予言した作品ということは言えるだろう。そこに大恐慌時代の失業、貧困といった問題が重層的に絡み、随所に散りばめられたギャグも次第に笑えなくなってしまうほどの深みをもった作品であると思う。

12月12日 ジョグ10キロ

|

« 『黄金狂時代』 | トップページ | 『ライムライト』 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『モダン・タイムス』:

« 『黄金狂時代』 | トップページ | 『ライムライト』 »