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2015/02/26

『書店員ミチルの身の上話』

Michiru佐藤正午『身の上話』のTVドラマ版。NHK「よる★ドラ」で2013年1~3月に放映。番組HPの紹介文。

「もう少しだけ幸せになりたい」とついた小さな嘘。気まぐれな行動。そして一枚の宝くじが、平凡な人生を送るはずだったヒロインの運命を大きく狂わせる。裏切り、嘘の連鎖、殺人、そして逃避行。次々と起こる予測不能の事件がヒロインを翻弄する、じわりと怖い衝撃のサスペンス。NHK初主演の戸田恵梨香が「流転のヒロイン」を演じる。(引用終わり)

少し設定を変えたところはあるが、ほぼ原作どおり忠実にドラマ化している。ミチルの地元は原作では特定されていないが、ドラマでは長崎となっている。佐藤正午の出身・在住地である佐世保からの連想かもしれないが、そこの教会が最後の印象的なシーンの舞台となっている。

「土手の柳は風まかせ」と妹にまで揶揄される頼りない主人公・ミチルを戸田恵梨香が好演。竹井に追い詰められて逃避行に出、ついに進退窮まった場面では、後に夫となるバス運転手ならずとも思わず声をかけたくなる。

一見大人しいが裏に底知れぬ怖さを秘めた竹井は、高良健吾のハマり役というべきだろう。静謐な語り口でバス運転手を脅迫する場面など鬼気迫るものがある。現在上映中の『悼む人』では主人公の静人を演じているが、そういう少し特異なキャラクターにはうってつけの、ただのイケメンではない得難い俳優だと思う。

2月24日 休養
2月25日 ジョグ10キロ
2月26日 休養

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2015/02/23

『ジャンプ』

Jump_3引き続き、佐藤正午。アマゾンの紹介文。

その夜、「僕」は、奇妙な名前の強烈なカクテルを飲んだ。ガールフレンドの南雲みはるは、酩酊した「僕」を自分のアパートに残したまま、明日の朝食のリンゴを買いに出かけた。「五分で戻ってくるわ」と笑顔を見せて。しかし、彼女はそのまま姿を消してしまった。「僕」は、わずかな手がかりを元に行方を探し始めた。失踪をテーマに現代女性の「意志」を描き、絶賛を呼んだ傑作。(引用終わり)

タイトルの「ジャンプ」には、「飛び乗る」「飛び降りる」から転じて、「姿をくらます」という意味もある。三谷(僕)の前から突然居なくなったみはるは、一体どこにジャンプして行ったのか。

しかし、この小説の重要なテーマは、みはるの失踪の顛末やその理由ではなく、ましてや「現代女性の意志」などではなく、むしろ彼女の失踪前後に続いたいくつかの偶然が、彼女の、そして三谷の人生を大きく左右してしまったという事実の重さではないかと思う。

人生にはいくつもの分岐点がある。「あの時、○○をしていれば…」あるいは「△△をしていなければ…」。あの夜、三谷がアブジンスキーなる強烈なカクテルを飲んでいなければ、みはるがリンゴを買いに出かけなければ、翌朝かかってきた電話に三谷が出ていれば、みはるが失踪することはなかったかもしれない。

三谷が5年ぶりに彼女と再会することになる最後の章でも、三谷が博多から大阪に戻る予定を遅らせてまで、彼女と同じ有田行きの列車に乗り込まなければ、失踪の真相は遂に分からずじまいになっていたという設定で、これが冒頭と見事なシンメトリーをなしている。

いくつかの偶然の連続や、みはるの失踪の真相についてはやや作為的に感じる部分もあり、小説の完成度という点ではいまひとつの感が拭えないが、それでも最後まで飽きさせずに読ませる力量は大したものだ。

2月21日 ジョグ10キロ
2月22日 休養
2月23日 ジョグ10キロ

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2015/02/20

『羊たちの沈黙』

Lambs1991年米。アカデミー賞主要5部門受賞。アマゾンの紹介文。

女性を誘拐し、皮を剥いで殺害する連続殺人事件の捜査を任命されたFBI訓練生のクラリス。彼女に与えられた任務は9人の患者を惨殺して食べた獄中の天才精神科医レクター博士に協力を求め、心理的な面から犯人に迫ることだった。レクター博士は捜査に協力する代償に、彼女自身の過去を語らせる。息詰まる心理戦の果てに導き出された答えとは──?(引用終わり)

メインのストーリーは連続猟奇殺人事件の犯人捜しであるが、その真犯人は意外にも、「ありがち」な背景と動機を持つ男だった。確かに、クライマックスでクラリスが彼と対決するシーンは手に汗握る迫力があるのだが、この映画の魅力は実はその本筋にあるのではない。

それは何といっても、犯人探しのヒントを与えることになるハンニバル・レクターの特異な人物造形にある。“Hannnibal the Cannibal” (人食いハンニバル)とは全くシャレになっていないが、アンソニー・ホプキンスの鬼気迫る演技は、本当の恐怖というのはこういうものだと教えてくれる。

厳重な檻の中で彼が安物のラジカセで聴いているのは、バッハのゴルトベルク変奏曲。その優雅なメロディと裏腹に進行する凄絶な脱出劇の一部始終。この映画の本当のクライマックスシーンはここではないかと思わせるほどの迫力だった。

2月18日 休養
2月19日 ジョグ10キロ
2月20日 休養

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2015/02/17

『身の上話』

Minoue_3引き続き、佐藤正午。版元の紹介文。

あなたに知っておいてほしいのは、人間にとって秘密を守るのはむずかしいということです。たとえひとりでも、あなたがだれかに当せんしたことを話したのなら、そこから少しずつうわさが広まっていくのは避けられないと考えたほうがよいでしょう。(『【その日】から読む本』第二部・第4章)
不倫相手と逃避行の後、宝くじが高額当選。巻き込まれ、流され続ける女が出合う災厄と恐怖とは。(引用終わり)

主人公は地方の書店に勤めていた平凡な女性・ミチル。彼女の驚くべき「身の上話」を、夫である語り手が聞き取って記録したという体裁になっている。

ミチルは地元で交際している男性がいるのに、東京から出張でやってくる妻帯者のセールスマンとも不倫関係にある。ある時、なりゆきでそのセールスマンと一緒に東京に行ってしまう。

その突拍子もない行動に驚かされるが、それはまだ序の口。東京行きの直前に同僚から頼まれて買った宝くじが、何と一等2億円に当選していたことが判明したことから、ミチルの人生は予想もつかない展開を迎える。

ところで、紹介文にある『【その日】から読む本』とは、宝くじの高額当選者だけに配布される本だそうだ。一度でいいから手にしてみたいものだ。(笑)

NHKが一昨年に戸田恵梨香主演でTVドラマ化し、DVDも既に出ているので、観てみようと思う。

2月15日 LSD40キロ
2月16日 休養
2月17日 ジョグ10キロ

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2015/02/14

『アンダーリポート』

Underreport佐藤正午著。この作家は初めて読んだ。アマゾンの紹介文。

単調な毎日を過ごしていた検察事務官・古堀徹のもとに突然・かつての隣人の娘・村里ちあきが現れた。彼女の父親は15年前に何者かによって殺され、死体の第一発見者だった古堀に事件のことを訊ねにきたのだ。古堀はちあきとの再会をきっかけに、この未解決の事件を調べ始める。古い記憶をひとつずつ辿るようにして、ついに行き着いた真相とは―。秘められた過去をめぐる衝撃の物語。(引用終わり)

アンダーリポート under-report とは「過小報告」のことで、本書283頁に、「実際に起きているのに報告されない犯罪、統計にはふくまれることのない犯罪」という記述がある。さらには、殺人事件と認知されても、警察によって見逃され、発覚しない意図を持つ殺人もまた、これに該当するのかもしれない。

純然たる推理ものではない。「秘められた過去」の真相は第1章からその一部が明かされ、途中から全体像もほぼ想像がつくようになる。その謎解きというよりは、事件の細部や、関わった人間の心情といったものが、驚くほど緻密な文体で描かれている。

構成的にも凝っていて、第1章と最終章が同じ場面の後半、前半という設定になっている。最後まで読み終えた読者は必ず、もう一度冒頭から読み返してみたくなり、あちこちに散りばめられた伏線に改めて気づくという仕掛けになっている。大変巧みなストーリーテラーというべきだろう。他の小説やエッセイも面白そうだ。

2月12日    ジョグ10キロ
2月13、14日 休養

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2015/02/11

『それでもボクはやってない』

Soredemo2007年東宝。周防正行監督。allcinema の紹介文。

フリーターの金子徹平は、会社の面接に向かうため通勤ラッシュの電車に乗っていた。そして、乗換えの駅でホームに降り立った彼は女子中学生から痴漢行為を問いただされる。そのまま駅員によって駅事務所へ連れて行かれた徹平は、やがて警察へと引き渡される。警察署、そして検察庁での取り調べでも徹平は一貫して“何もやっていない”と訴え続けるが、そんな主張をまともに聞いてくれる者はいなかった。そして、徹平は具体的な証拠もないまま、ついに起訴され、法廷で全面的に争うことになるのだが…。(引用終わり)

「痴漢」「冤罪」などで検索すると、その恐ろしさを紹介したサイトが沢山出てくる。満員電車で通勤する日常にポッカリと空いた陥穽。そこに落ち込むとどれほど悲惨なことになるのか。この映画はそれを残酷なほどのリアリティで描き出す。

自分は法学部出身でありながら、実際の法廷は一度も見聞きしたことはないが、おそらく実物はこれにかなり近いと思わせる丁寧なつくりだ。被告人や証人が言い澱んだりするシーンは、もはや演出とは思えないくらいリアルだ。

ただ、警察や検察の強権的捜査の恐ろしさだけが強調されているのは、やや一面的と感じられた。本作のテーマからすると止むを得ないが、冤罪を生み出さないための(というか冤罪で自らの首を絞めないための)慎重さは彼らにも当然あるはずだし、そこも描写すればドラマとしての奥行が深まっただろう。被害者側の心情ももう少し掘り下げが必要だ。

裁判員制度がスタートしたり、いくつかの冤罪事件が大きく報道されたり、録画録音による取調べ可視化の動きが出たりして、刑事裁判に対する人々の関心も高まりつつあるが、刑事裁判の実情と問題点を広く世に知らしめることになった本作品の社会的意義は大きいと言えるだろう。

2月 9日 休養
2月10日 ジョグ10キロ
2月11日 休養

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2015/02/08

謎の仏頭、その後

昨年末、明日香村で見かけた謎の仏頭。1月末までに自主的に撤去されない場合、行政側で現状回復すると伝えられていたが、その期限が過ぎた今日、芋ケ峠まで走りに行ったついでに現場を確認してみた。現場を確認したついでに峠まで走ったわけではない。(笑)

驚いたことに、既に仏頭はきれいに撤去され、ほぼ完全に現状回復がなされていた。

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峠道が崩れてもなかなか対処しない桜井土木事務所にしては「仕事が早い」。それだけ近隣住民からの苦情が多かったのかもしれない。近くにはご覧のような通知文が掲示されていて、所有者は7月末までに橿原市内の保管場所まで取りに来いと書いてある。

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間違いなく刑罰を科され、撤去費用も請求されるだろうから、「所有者」が現れようはずがない。ということは、われら県民が納めた税金で撤去作業が行われたことになる。何とも怪しからん話である。(怒)

2月6日 ジョグ10キロ
2月7日 休養
2月8日 LSD20キロ

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2015/02/05

『新幹線大爆破』

Hikari109_21975年東映。高倉健、宇津井健ほか。東映の紹介文。

博多に向かって疾走中のひかり109号に爆弾がセットされた。爆弾は時速80キロ以下になると自動的に爆発するようセットされており、犯人グループは国鉄に500万ドルを要求。警察は取引きに応じるが…。(引用終わり)

1975年公開ということで、JRではなく国鉄、車両は全て0系だし、街の公衆電話は青電話、新宿副都心の高層ビルもまだ2、3棟である。さすがに時代を感じさせるが、内容は今見ても十分楽しめる。

単なるパニックものではなく、高倉健演じる主犯格と相棒二人それぞれの来歴には当時の世相が反映しており、また、乗客の安全を最優先する国鉄側と犯人逮捕を至上命題とする警察側の対立など、社会派ドラマとしての厚みもある。

なかでも、警察のみならず上司と対立してまで1500名の乗客の生命を守ろうとした、宇津井健演じる運転指令室長は、「国鉄マン」の心意気を示している。しかし、さすがに内容が内容だけに、撮影に当たって国鉄の協力は得られなかったそうである。それはそうだろう。予告篇で「ひかりは今、巨大な棺桶と化した!」なんてデカデカと書いたら。(苦笑)

2月2日 ジョグ10キロ
2月3日 休養
2月4日 ジョグ10キロ
2月5日 休養

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2015/02/02

結露対策

毎年冬になると窓や窓枠の結露に悩まされてきた。特に和室の窓はサッシ部分に溜まった水滴が木の窓枠まで濡らすことがあり、毎朝拭かないと木が腐ってしまいかねない。冷え込みの厳しいこの時期はほぼ日課のようになっているのだ。

ネットで検索すると、多くの人が同じ悩みをもっているようで、様々な対策が試みられている。窓や窓枠に保温テープを貼る、結露した水を吸い取るテープを貼る、除湿機で部屋の湿度を下げる、窓付近を暖房で温めるなど。しかし、コレという決定打はなかなかないようだ。

結露の原因ははっきりしていて、空気中に最大限含むことのできる水蒸気(飽和水蒸気量)は温度が低いほど小さくなり、屋外の冷気で冷やされた窓付近では、飽和水蒸気量を上回る水蒸気が水となって、冷えた窓や窓枠に結露するのだ。ビールジョッキなどに水滴がつくのも同じ原理だ。

従って、抜本的な対策としては、部屋の内外の温度差をなくす(あるいは極力小さくする)か、部屋の中の水蒸気をなくす(あるいは極力少なくする)しかない。窓を保温したところで、壁など別の場所が結露することは避けられない。

そこで、この原理に基づく、実に簡単で有効な対策を思いついた。かかるコストは0円である。それは・・・

1月30、31日 休養
月間走行    205キロ
2月 1日    ジョグ10キロ

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