『振り込め犯罪結社』
捕まるのは末端だけ。金主(オーナー)は絶対に捕まらない。
振り込め詐欺実行犯の正体は、裏の金融ビジネスとしてフランチャイズ化された「犯罪結社」である。その組織は、集金係である「ダシ子・ウケ子」、電話専門部隊「プレイヤー」、組織を統括管理する「番頭」、出資して配当を受け取る「金主(オーナー)」に分かれており、あくまで利益を追求する理念や組織論は、もはや一般企業がぬるいと思えるほどに卓抜したものだった。暴力制裁、関東連合やヤクザとの関係、資金洗浄と詐欺マネーの行方……振り込め詐欺10年の興亡を追った衝撃のノンフィクション。(引用終わり)
「オレオレ」「架空請求」「還付金」などの特殊詐欺事件が後を絶たない。なぜ本当の息子でない人間の電話に簡単に騙されてしまうのか。なぜ詐欺グループは警察の捜査網をかいくぐって活動を続けられるのか。
以前から非常に関心をもっているのだが、特殊詐欺の実態について書かれた本は意外に少ない。扱う対象が対象だけに取材が困難なことは想像に難くないが、そうした中で実際の「プレイヤー」経験者等に取材して書かれた本書は、かなり踏み込んで書かれていると思う。
最初の疑問、「なぜ騙されるか」についての答えはこうだ。実際に被害者に電話をかける「プレイヤー」を養成する研修講師の発言である。
「詐欺ってのは、騙すってことじゃねーんだよ。詐欺はまず、信じてもらうこと。でも信じてもらいたいって気持ちが出た時点で、駄目なんだよ。だって本当に本人だったら、相手が信じるのが当然だろ。そのぐらいに完全に成り切って、その上で、お金振り込んでください、お願いしますってことなんだよ。婆さんの息子に成り済ますなら、婆ちゃん本当に済まないけど、本当に困ってるからお金何とかしてって、そういう気分にガチで成り切る。お前らはガチでババアの孫になる。分かる?」(20頁)
電話の向こうには本当の孫がいて、切迫した様子で助けを求めている。そう思わせてしまうのだ。さらには本人役から電話を代わった警官役、弁護士役などが、それぞれの心情まで感じ取れるような口調で畳みかけていくのである。
次に、なぜ詐欺グループは生き延びられるのか。それは、末端の集金係である「ダシ子、ウケ子」は捕まっても、彼らと「プレイヤー」「番頭」とは見事に分断されていて、累が及ばないようになっているからだ。最悪、「番頭」まで捕まったとしても「金主」は絶対に捕まらず、また新たな「番頭」を見つけて「事業」を継続することが出来るのだ。現金の受渡しや保管、警察の捜査情報等についての危機管理は徹底していて、著者の言うように一般企業のそれが生ぬるいと思えるほどだ。
一方、被害者は即座に何十万、何百万という現金を用意することの出来る高齢者が多く、そのこと自体も驚きなのだが、それが彼らにとっては一種の免罪符となっていて、「心おきなく」犯行を重ねられるという実態があるようだ。
金がなくてピーピー言ってる人間から金をむしり取るようなことをする奴は、悪人だよ。でも、詐欺で電話する相手は、何百万かの金をその日に用意できて、振り込むだけの財力がある人間。言ったら、金持ちだ。(中略)例えば、こういうことだ。<資産5千万の人間から、500万を取る。> これが最悪の犯罪なのか?(165頁)
もちろん、たとえ相手が唸るほどの金を持っていようと、犯罪は犯罪である。しかし、「盗人にも三分の理」というのか、彼らの心情は分からないでもない気がする。特殊詐欺とは結局のところ、高齢層に偏在する資産、それに対する社会的弱者の貧困、若年層の雇用問題といった、今の格差社会を反映した犯罪であることだけは確かなようである。
1月21日 ジョグ10キロ
1月22日 休養
1月23日 ジョグ10キロ
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コメント
うんそう~~ 近大マグロの報道みてたら 高齢の裕福層が 銀座で 若い子の給仕で たべてた~~~あれ完全に格差やんね~~(苦笑!!)
投稿: たけした | 2015/01/24 10:07
たけしたさん
それでも、そうやって普通にお金を使ってくれた方が、
真面目に働く若い人の収入を増やすことに繋がるかと。
投稿: まこてぃん | 2015/01/24 17:50