『舟を編む』
出版社・玄武書房に勤める馬締光也(まじめ みつや)は、営業部で変わり者として持て余されていたが、言葉に対する天才的なセンスを見出され、辞書編集部に異動になる。新しい辞書「大渡海(だいとかい)」――見出し語は24万語。完成まで15年。編集方針は「今を生きる辞書」。個性派ぞろいの辞書編集部の中で、馬締は辞書編纂の世界に没頭する。 そんなある日、出会った運命の女性。しかし言葉のプロでありながら、馬締は彼女に気持ちを伝えるにふさわしい言葉がみつからない。問題が山積みの辞書編集部。果たして「大渡海」は完成するのか? 馬締の思いは伝わるのだろうか?(引用終わり)
まず原作本を読みたくて図書館に予約していたが、順番が回ってくる前に近所のレンタル店で見かけたので、映画の方を先に観ることになった。「辞書作り」というかなり地味なテーマで、映像にして見せるのは難しかろうと思っていたが、それは杞憂に終わった。おそらく三浦しをんの原作がよく出来ているに違いなく、2時間少しの間、全く退屈することはなかった。
松田龍平は、無口で不器用だが名前の通り真面目で一途な青年社員・馬締を好演。そのよき理解者となる香具矢役の宮﨑あおいはさすがの安定感だ。ところで、「馬締」という姓は実在する。ちょっと前のTVニュースでどこかの役所の「馬締さん」が出ていた。
辞書には私も普段からお世話になっている。言葉の意味や用字を調べる以外にも、時折何気なくパラパラとページをめくって、知らない言葉に出会ったりするのも楽しい。英語辞典の語源の解説を読んでいると、その単語の成り立ちが分かるだけでなく、同じ接頭辞、接尾辞を持つ単語の意味が何となく推測できたりして面白いものだ。
故伊丹十三氏も辞書を愛好されていたようで、エッセー集『再び女たちよ!』(文春文庫刊)の「辞書」という項で、辞書で知った自分の感性に合った漢字で作文を書いて、漢字制限論者の教師に減点された高校時代の思い出などを語っているが、辞書の序文について書かれた次のような指摘は、正に卓見であると思う。
辞書に関して、私が素晴らしいと思うのは、その序文である。(中略)辞典の序文には、労作を成し遂げた時の安堵の情と、誇りやかな自負、そうして、この厖大な労作を貫いた確固としたルール、そういうものが圧縮された形で記されているものなのだ。そうして、言葉を扱う人人が悪い文章を書こう筈がない。辞書の序文というのは、まず間違いなく名文なのである。(中略)手近のどの一冊をとってみても、辞書の序文というものは、男らしく、すがすがしいのである。
3月19日 ジョグ6キロ
3月20、21日 休養
3月22日 ジョグ10キロ
3月23日 休養
| 固定リンク
« 『熔ける』 | トップページ | 人工芝を貼り替え »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
『舟を編む』。何百人待ちを経て先月読み終えました。
前半が特に面白かったです。松田龍平さんのお顔をずっと思い浮かべながら読んでました。(^^;
映画はテレビ待ちしてます。(^^;
まこてぃんさんのブログをきっかけにお伊勢参りの本とか鏑木さんの本とかも(他にも何冊か?)読みました。
きっかけをいただいてありがとうございます。
投稿: くー | 2014/03/25 19:22
くーさん
近所の図書館は数十人待ちでしたが、
在庫5冊なのでなかなかです。
面白い本があれば紹介してください。
時間だけはたっぷりありますので。(笑)
投稿: まこてぃん | 2014/03/25 22:53
舟を編む、1月ごろに図書館で借りて読みました。
予備知識ゼロ、映画になっているとかも全然知らず(笑)、ただ何となく三浦しをんさんの本が読みたいなと思って、開架にあるのをひょいと選んで借りました。
なので、読み始めるまで何をテーマにした小説かも知らなかったのですが、まあ何と言うか、ぐいぐい引き込まれて一気に読み切りました。
ということで、映画はDVDレンタルしてみてもいいかなと思いつつ、映画を見る習慣がないものでどうなることやら。(小説も元来ほとんど読まないのですが:笑)
熔ける、は、とある事情で目を通したのですが、興味としてはともかく、余り得るところがないなと予想通り(笑)がっかりしました。
投稿: でざあと | 2014/03/26 20:10
でざあとさん
三浦しをんさんの作品は、『風が強く吹いている』や、
『神去なあなあ日常』も最近映画化されていて、
映像化したくなる何かを持っているのでしょうね。
投稿: まこてぃん | 2014/03/26 21:16