身近にある道標
伊勢本街道を経験して急に愛着が感じられるようになった道標だが、実はうちの近所にもあることが分かった。場所は橿原神宮の南にある久米寺。地上の女性のふくらはぎを見て動転したため、法力を失って空から落ちたという微笑ましい伝説のある久米仙人ゆかりの寺である。
ここの敷地の南端に道標が立っていた。通りから見える2面に「左 志ん武 橿は羅」「右 おかてら たち花」とあるが、神武天皇陵、橿原神宮は左=西ではなく、寺の北にあり、岡寺、橘寺も右=東というよりは、寺から南東方向にある。どうも方角が違っているようだ。
と思って裏の2面を見ると、「真言最初 久米寺」「大正六歳□丁巳」(□は判読不能)の刻銘がある。「久米寺」がひときわ大書されていることから、寺の案内が主たる目的で、道標も兼ねて建てられたものと考えられる。それが通りの方を向いていないのは、どこかから移設されたからかもしれない。旧道のある寺の南東側に向けて建っていたと考えれば、道標の方角とも符合する。
それから、寺の南側の通りにはこんなのもあった。「☜來目邑傳稱地道」とあり、昭和十五年の刻銘があるので、紀元2600年で大勢の人が橿原を訪れた際に、来目邑(くめむら)伝説の比定地への案内として建てられたものと思われる。この前を何回通ったか分からないのに、今日までその存在に全く気がつかずにいた。相済まぬことだったと、思わず小さく頭を下げた。(苦笑)
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント