『フライト』
フロリダ州オーランド発、アトランタ行きの旅客機が原因不明の急降下。ウィトカー機長は墜落寸前の機体を回転させ、背面飛行で緊急着陸に成功、多くの命を救う。それはどんな一流パイロットにも不可能な奇跡の操縦だった。一躍時の人となったウィトカー機長だが、ある重大な疑惑をかけられる。彼の血中からアルコールが検出されたのだ……。(引用終わり)
他の人のレビューでも指摘されているとおり、これは航空パニック映画ではなく、アルコール依存、薬物依存をいかに克服するかという、現代アメリカ社会が抱える大きなテーマに正面から向き合ったヒューマンドラマと捉えるべきだろう。
(以下、ネタバレ注意)
8月29日 ジョグ10キロ
8月30日 休養
依存症のせいで大切な家族が離れていき、さらに、誰にもなしえない高度な技術をもった職業すら失う危機に直面し、その重圧からまたアルコールに溺れる悪循環に陥った主人公の姿は痛々しい。禁酒のためカンヅメになったホテルの隣室に偶然入り込んで見つけた冷蔵庫の酒瓶たちの悪魔的な美しさといったら!
薬物で何とか正気を取り戻した公聴会では、嘘に嘘を重ねて何とか切り抜けようとするが、生前深い関係にあり事故で亡くなったキャビンアテンダントを裏切ることになる「あとひとつの嘘」だけはどうしてもつけなかった。断腸の思いでの彼の選択は間違っていなかったと思う。
もうひとつ、日本人にはどうしてもピンと来ない点だが、この作品の通奏低音になっているのが宗教であると思う。共に生死を賭けた副機長は敬虔なクリスチャンだが、主人公は宗教には懐疑的だった。飛行機が墜落した場所は教会の裏庭のようなところで、飛行機の尾翼が教会の尖塔の先端を破壊して不時着するシーンは、そうした主人公の心象を象徴するかのようだ。
しかし、公聴会のクライマックスの場面で最後の嘘がつけず、真実を述べる時に主人公が呟いたのは、神の加護を求める言葉だった。そうして全てを白日の下にさらけ出し、パイロットの資格を剥奪され、矯正のため刑務所に収容された主人公の前に現れた息子から、「あなたは何者なのか?」と問いかけを受けるところで映画は終わっている。優秀なパイロットである前に、あなたは愛される夫であり、頼りになる父親であるべきなのではないかと。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント