『とにかくうちに帰ります』
職場のおじさんに文房具を返してもらえない人。微妙な成績のフィギュアスケート選手を応援する人。そして、豪雨で交通手段を失った日、長い長い橋をわたって家に向かう人――。それぞれの日々の悲哀と矜持、小さなぶつかり合いと結びつきを丹念に描く、芥川賞作家の最新小説集。働き、悩み、歩き続ける人たちのための六篇。(引用終わり)
前半が連作短篇「職場の作法」、後半が表題作という構成。大阪南港がモデルと思われる島から大雨の中を歩いて帰宅する表題作も良かったが、アルゼンチン代表のフィギュアスケート選手のことが気になって仕方なくなる「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」の何とも言えない脱力感が心地よかった。
前に読んだ『ポトスライムの舟』もそうだったが、普通の人が普通に過ごす日々の中での、ちょっとした感情の襞のようなものを、うまく掬い上げて作品に仕立ててしまう力量は大したものだ。
何でもない出来事をやたらに脚色し、物語にしてしまうのが今日の(特にマスコミの)風潮だとすれば、彼女の作風はこれと逆を行く、言わば「アンチストーリー」をテーマとしているように思われる。そんな言葉があるのかどうか知らないけど。
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コメント
まこてぃんさん、土曜日はお久でした。(^^)/
↑この本も一緒に借りてますが、まだ1Pも読めてません。^^;
なんせ『ポトスライムの舟』がまだですから。
毎日持ち歩いててもなかなか進まずで困ったもんです。
借り出しを延長して読み終えるつもりではおります。(笑)
投稿: くー | 2012/09/09 21:36
くーさん
昨日は本当にお久しぶりでした。
津村さんの本はどこまで読んでも
金太郎飴みたいな独特の感覚です。
読み進んでいるんだかどうだかよく
分からないのが特徴ですね。(笑)
投稿: まこてぃん | 2012/09/09 22:11