『カソウスキの行方』
津村記久子著。「カソウスキ」とはロシア人の名前か何かと思っていたら、「仮想好き」だった。この人のタイトルは一捻り効いている。版元の紹介文。
「恋愛はすごいなあおい」そう口に出して言ってみるが、棒読みだった。――<本文より>
「アラサー」「独身」「恋人なし」の“してるつもり恋愛”はどこへいく? 『ポトスライムの舟』著者の会心作
不倫バカップルのせいで、郊外の倉庫に左遷されたイリエ。28歳、独身、彼氏なし。やりきれない毎日から逃れるため、同僚の森川を好きになったと仮定してみる。でも本当は、恋愛がしたいわけじゃない。強がっているわけでもない。奇妙な「仮想好き(カソウスキ)」が迎える結末は――。芥川賞作家が贈る、恋愛“しない”小説。(引用終わり)
表題作では主人公が自身をパソコンに見立て、生活というハードディスクの空き容量を仮想メモリにあてて、人生への意欲を仮想的に満たそうと決意したところで、同僚の森川を好きになったということを仮定してみる。
一目惚れした男の友人と夜10時まで限定の交際を続ける「Everyday I Write A Book」、交際相手の行動を数値化し、お互いの不義理の回数を合致させようとする「花婿のハムラビ法典」。
決して、恋愛「しない」というわけではないが、どこか覚めたというか、日常生活から遊離することのない男女関係は、かなり現実味があって、どこかの誰かが実際の経験を語るのを聞いているかのような感覚で読めた。
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