『ポトスライムの舟』
津村記久子著。版元の紹介文。
本当に大事なことは、きっと毎日少しずつ育ってる。
第140回 芥川賞受賞作
「つつましやかに生きている女性の、そのときどきのささやかな縁によって揺れ動く心が、清潔な文章で描かれていて、文学として普遍の力を持っている」――選考委員 宮本輝氏
お金がなくても、思いっきり無理をしなくても、夢は毎日育ててゆける。契約社員ナガセ29歳、彼女の目標は、自分の年収と同じ世界一周旅行の費用を貯めること、総額163万円。
野間文芸新人賞(『ミュージック・ブレス・ユー!!』)に続く受賞!なにげないのに新しい、さりげないのに面白い、私たちの文学!
同時収録「十二月の窓辺」
(引用終わり)
直木賞作家の作品はよく読むが、いわゆる純文学ものは久々だ。この人が朝日新聞夕刊に書いているエッセイがとても面白く、興味をもって読んでみた。
2つの作品に共通するテーマは、今の女性にとって「働く」とはどういうことなのか、という問いかけであると思う。社会の底辺で働く人間の苦しみといった、プロレタリア文学的な読み方をする向きもあろうが、どこにでもいる「アラサー」女子の、いわば等身大の日常生活、ちょっとした事件が、淡々と語られている。
『ポトスライムの舟』では、観葉植物のポトス、カヌー、雨など、いろいろと暗喩らしきものが散りばめられているが、その意味をあまり詮索するのもどうかと思う。主人公の心に去来する心象風景の一部と考えればよいのではないか。
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