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2012/02/22

『幻影の書』

521712_3ポール・オースター著。この作家は初めて。料理人コウケンテツ氏が朝日新聞のコラムで紹介していて面白そうだったので読んでみた。版元紹介文。

妻と息子を飛行機事故で失うという人生の危機の中で、生きる気力を引き起こさせてくれた映画の一場面。主人公はその監督ヘクターについて調べてゆくことで、正気を取り戻す。ヘクターはサイレント時代末期に失踪し、死んだと思われていた。しかしある女性から実は生きていると知らされる……。意表をつくストーリー、壮絶で感動的な長編。(引用終わり)

版元の書評やアマゾンの感想文でも色々と述べられているが、この長篇作品の全体構造を記述するのは容易なことではない。主人公ジンマーの回想の中で、失踪した喜劇俳優ヘクター・マンの奇想天外な生涯が述べられ、さらには失踪後のヘクターが人知れず製作した映画のストーリーが重層的に絡んでくる。

詳細な作品分析は専門家の手に委ねるとしても、次の展開が全く予想できないストーリーテリングの上手さに惹きつけられてしまう。柴田元幸氏の訳文は句読点が少なく、一見読みづらい印象を受けるが、日本語として大変こなれていて大変感心させられた。

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