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2011/07/02

『繋がれた明日』

51s7emmg3dl__sl500_aa300__2真保裕一著。例によって四六判416頁の長篇だが、今回は2週間で読み終えた。アマゾンの紹介文。

喧嘩の末、誤って殺人の罪を犯した中道隆太は、刑期満了を目前に仮釈放となる。やがて勤務先や自宅のアパートに「この男は人殺し」と書かれた中傷ビラをばらまかれる。いったい誰が何の目的でこんな仕打ちをするのか? 隆太は孤独な犯人探しに乗り出すが、彼の前には巨大な“障壁”が立ちはだかった‥‥‥。“罪と罰”を読者に問うサスペンス巨編。週刊朝日好評連載の単行本化。(引用終わり)

7月1日 休養
7月2日 ジョグ10キロ

紹介文にある通り、人間の罪と罰という大変に重いテーマの作品なのだが、決して大上段に構えるのではなく、言わば等身大の人間の苦悩をリアルに提示して見せることで、犯罪や裁判などとは無縁な生活を送っている大多数の読者に訴えることに成功している。

犯罪や非行に陥った者の更生を支援する保護司の、あまり知られていない仕事ぶりについても丹念に取材されていて、主人公の中道を担当する大室という保護司の言葉は実に味わい深い。

彼は言わばそれが本職であるけれども、それよりも中道の幼なじみで、今は寿司職人となっている岩松浩志が中道を励ます次の言葉が胸に響いた。

「(被害者の家族に)会ってくれなくたって仕方ないだろ。でも、俺は思うんだ。おまえがあきらめない限り、いつか必ず気持ちは伝わるはずだってな」

「慰めで言ってるんじゃない。おまえを今でも強く恨んでるってのは、それだけ家族を愛してたってことだ。人を強く愛せる人なら、必ず人の辛い気持ちは理解できる。ただ、生半可な気持ちでいたら、すぐに見ぬかれちまうだろうがな」

「俺の商売だって似たようなところがある。若い連中にただ厳しいだけの大将ってのは、まず仕事のほうはたいしたことがないものなんだ。仕事のできる大将は、人の努力の具合が手に取るようにわかる。自分も厳しい修業時代を経験してきたから、相手がどの辺りで悩んでいるのかが見えてくる。俺はまだ自分のことで精一杯で、人の仕事ぶりまではわからない。でも、いつか寿司の握り方ひとつで、若い者の胸の内を読めるような職人になれたら素晴らしいなって思ってる。なあ、どうだ、俺の握った寿司は」(296-297頁)

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