『遥かなるセントラルパーク』上下
トム・マクナブ著。文春文庫所収。出来ればニューヨークを走る前に読みたかったが、近所の図書館に蔵書がなく、隣市の図書館から取り寄せてもらうのに時間がかかった。版元紹介文。
(上巻)元オリンピック選手も失業労働者も、イギリス貴族もインディアンも、さらにはバーレスクの踊り子まで、世界60カ国から2,000人が馳せ参じた大賞金ウルトラマラソン。ロス―ニューヨーク間5,000キロ、3カ月の行程にどんな冒険と人間ドラマが待つのだろう? これぞ“面白い”小説の見本と激賞された気宇壮大、爽かな感動を呼ぶ傑作。
(下巻)炎熱と豪雨のモハーヴェ砂漠、酷寒のロッキー越え、シカゴではカポネの一党が待ちかまえている。アメリカはいかにも広い。サーカスを引きつれ、町々でギャンブルに応じつつ、不況をはねとばすような陽気な集団がアメリカ大陸を横断する。猥雑なほど人間的なランナーたちが日一日と心に珠を得て、いまゴールに近づいて行く。(引用終わり)
12月11日 ジョグ10キロ
12月12日 ジョグ10キロ
原題の FLANAGAN'S RUN はこのレースの主催者の名前から来ているが、このいささか出自の怪しげなフラナガン氏をはじめ、参加するランナーはそれぞれ辛い過去を抱えた個性的な人物ばかり。アメリカ大陸を走って横断しようなどという途方もないことを考えるのも、またそれを実際に走るのも、とても普通の人間ではないのである。
時代設定は1931年。大不況、禁酒法、ナチスドイツの台頭という暗い時代を吹き飛ばすようなランナーのエネルギーは様々な障害を乗り越え、次第に市民の熱狂的な支持を集めていく。セントラルパークのラストシーンは先月のマラソンの記憶と重なり、胸が熱くなる思いだった。
これほど面白い小説なのに文春文庫が絶版となっているのは信じられない。こういう時こそ公共図書館のありがたみを実感する。
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