『鬼の跫音』
「鈴虫」「犭(ケモノ)」「よいぎつね」「箱詰めの文字」「冬の鬼」「悪意の顔」の6篇からなる。それぞれに独特の味わいを持つホラーサスペンスの連作である。全てに「S」という名の人物が登場するが、直接の関連はないようである。そう言えば、『向日葵の咲かない夏』の自殺した同級生も「S君」だった。
短篇にもかかわらず、意表を突くどんでん返しあり、身も凍るようなホラー譚ありで、著者の並々ならぬ才能が窺える。現在、朝日新聞 be にエッセイを連載中だが、こちらも毎回とても面白く、「いま最も注目される作家」という惹句もあながち誇張ではないだろう。
表紙は下田ひかりの「聞こえますか」。色使いにもこだわった凝った装幀ともども、こういうのは電子書籍では味わえないのではないだろうか。
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