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2010/07/17

『向日葵の咲かない夏』

5126tmbttcl__sl500_aa300__3道尾秀介著。版元紹介文。

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。(引用終わり)

7月16日 ジョグ10キロ
7月17日 ジョグ10キロ

エゴン・シーレの向日葵の絵があしらわれた美しい装幀のカバーとは裏腹に、内容はいじめ、自殺、児童ポルノ、動物虐殺、ゴミ屋敷と、現代の病理が一気に噴出したような、目を覆いたくなる陰惨な物語である。

S君は自殺だったのか、他殺だったのか。死体を隠したのは誰なのか。二転三転する複雑なトリックに途中からついていけなくなった。最後の方で真相が明かされても、「ああそうですか」という感じで、見事に騙されたという快感も湧かなかった。

本書のキモは、主人公ミチオの次のようなセリフなのだろう。

「みんな同じなんだ。僕だけじゃない。自分がやったことを、ぜんぶそのまま受け入れて生きていける人なんていない。どこにもいない。失敗をぜんぶ後悔したり、取り返しのつかないことをぜんぶ取り返そうとしたり、そんなことをやってたら、生きていけっこない。だからみんな、物語をつくるんだ。昨日はこんなことをした、今日はこんなことをしてるって、思い込んで生きてる。見たくないところは見ないようにして、見たいところはしっかりと憶え込んで。みんなそうなんだ。僕は、みんなと同じことをやっただけなんだ。僕だけじゃないんだ。誰だってそうなんだ」(257頁)

とても深い内容の言葉なのだが、こういうことを10歳の子供に言わせるところがいかにも不自然である。実は「名探偵コナン」だったりして。(笑)

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