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2010/06/19

『乱反射』

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貫井徳郎は久しぶり。版元紹介文。

ひとりの幼児を死に追いやった、裁けぬ殺人。街路樹伐採の反対運動を起こす主婦、職務怠慢なアルバイト医、救急外来の常習者、事なかれ主義の市役所職員、尊大な定年退職者……複雑に絡み合ったエゴイズムの果てに、悲劇は起こった。残された父が辿り着いた真相は、罪さえ問えない人災の連鎖だった。遺族は、ただ慟哭するしかないのか? モラルなき現代日本を暴き出す、新時代の社会派エンターテインメント!(引用終わり)

6月18日 ジョグ10キロ
6月19日 ジョグ10キロ

悲惨な大事故というものは、通常では考えられないような人為ミスや偶然がいくつも重なったときに起きると言われる。この物語での幼児死亡事故は、社会的には小さな事件でしかなかったが、周囲の人間の些細なマナー違反や、犯罪とまでは言えない利己的行動がいくつも重なったところに起きた。

法的には一人の人間の責に帰され、刑事裁判にかけられるのだが、幼児の父はそれでは納得がいかず、関係した人々を次々に尋ねまわって事件の真相を探ろうとする。やがて、それが結局は天に唾するに似た行為であることを知った彼は、社会と人間に対する大きな絶望に襲われることになる。

物語の設定はやや作為的な感じがしないでもないが、それぞれの登場人物のディテールがよく書かれていて面白く、500頁を超える長篇にもかかわらず最後まで飽きさせない。「-44」から始まり、「0」の最後で事故が起きるという章立ても良かった。

ただ、最後のエピローグはいかにも蛇足という感じがした。『愚行録』のように全く救いのない話でも構わなかったと思う。

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