『夜の終焉』上下
(上)父母を殺されたうえにいわれなき中傷を受けた真野亮介は、故郷・汐灘を捨て、深夜営業の喫茶店を営んでいた。ある早朝、店を訪れた少女が事故に遭い、意識不明に。彼女が携えていた地図を頼りに彼は二十年ぶりに、汐灘に向かう。
(下)父が殺人を犯し、検事になることを諦めた川上譲は、東京で弁護士として、仕事に邁進していた。そこに舞いこんだ故郷・汐灘からの依頼。死刑を望む殺人犯の弁護。彼は二十年ぶりに、汐灘に向かう。犯罪被害者と加害者双方の家族が抱えるどこまでも深い闇をリアルな筆致で描く。(引用終わり)
1月27日 軽いビルドアップ10キロ
1月28日 ジョグ10キロ
シリーズ第2弾『断絶』の刑事・石神謙が登場、剱持代議士の事件にも言及されているけれども、前作を読まなくても特に支障はない。今回のテーマは20年前に汐灘で起きた殺人事件の当事者の家族を巡る物語である。
前半は20年前の事件を伏せたまま引っ張りすぎた嫌いがあり、それでいてバイクや料理の薀蓄にかなりのスペースを割くなど、ちょっと集中力が殺がれる思いをしたが、下巻に入っていよいよ真相解明に向けて動き始めると、ページを繰る手が止まらなくなる。
いつもながらの「ど真ん中、豪速球」ぶりで、大方の読者が想像するとおりに少女の身元が判明して、過去と現在を繋ぐパズルが全て完成するラストにかけては、カタルシスを感じさせる。
別シリーズの主人公、警視庁失踪課の高城賢吾が顔を出すところは、ファンには嬉しいサービスだ。その他にも、ちょっとした会話に巧まざるユーモアを紛れ込ませている。それが隠し味になって、重厚なストーリーにもかかわらず飽きさせないところは、この作家の進境ぶりを示している。
ところで、作品中に新潟の銘酒「久保田」の大吟醸「五合瓶」というのが出てくるが、これは間違いだ。大抵の吟醸酒がそうであるように、実際には一升瓶か四合瓶しか販売されていない。作者はじめ編集者など関係者に酒呑みがいなかったのだろうか。(笑)
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