黒田恭一氏、死去
音楽評論家の黒田恭一氏が先月29日に死去されていたことが分かった。死因は多臓器不全。享年71。
黒田氏はクラシックのみならず、ジャズやポップスにも造詣が深く、幅広い評論活動を続けてこられた。なかでもヘルベルト・フォン・カラヤンについて、その大衆的な人気に多くのクラシックファンが批判的な目を向ける中、プロの評論家ではほとんど唯一、その芸術に積極的な評価を与えてきたのは有名である。自らの信念を貫き、世に阿て筆を曲げることを一切しない、「文士」の気概を持った評論家だったと思う。
と言うと何だか気難しい人のようだが、自らの意見を押し付けることなく、自分が評価する演奏家の良いところを丁寧に解説し、後は読者の判断に委ねるというスタイルが好ましかった。雑誌『サライ』や、かつては『暮しの手帖』でも、クラシックに馴染みのない人にも親しみやすい文章を多くものされていた。
また、NHK-FMで日曜午前9時から放送される「20世紀の名演奏」では、「少し前の時代に行われた演奏に耳を傾け、それぞれの演奏の語る意味を探る」という企画で、毎回とても渋い演奏家を取り上げて紹介しておられた。ここでも、解説は要点のみに留め、時間の許す範囲でじっくり演奏を聞かせるというスタイルだった。最後の「どうか毎日をお気持ち爽やかにお過ごし下さいますように。黒田恭一でした。」というナレーションにも、温かい人柄が窺えた。
おそらく入院、手術といった事情からであろう、昨年から今年にかけて番組をしばしば休まれ、代役に諸石幸夫氏が登板したりしていた。この春から久々に復活したと思ったら、すっかり呂律がおかしくなっていて、楽団名がよく聞き取れないといった有様だった。それでも番組を続けたいという氏の並々ならぬ熱意が伝わり、毎回の放送に鬼気迫るものを感じていたが、それも先週末は過去の録音の再放送となり、そして今回の訃報となったのだ。
ところで、この番組のオープニングとエンディングには弦楽アンサンブルのゆったりとした音楽が流れ、日曜朝の雰囲気にぴったりだと思っていたのだが、誰の曲なのか分からずにいた。それが、最近急に気になって色々と調べてみたがついぞ分からず、思い余って先月25日にNHKにメールで問い合わせたら、その日のうちに回答があり、ボッケリーニの弦楽五重奏曲ハ短調G.377の第2楽章であるという。
当該CDは既に廃盤でアマゾンの中古市場にもなく、今月になって音楽好きの某友人のブログで心当たりの人がいないか尋ねた矢先のことだった。単なる偶然とは思うけれども、氏の死去と相前後したことで、ちょっと複雑な心境である。合掌。
6月3日 ジョグ10キロ/完全休肝
6月4日 休養
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コメント
友人などに打診中ですが、これはどうでしょう?とのこと
http://www.amazon.co.jp/gp/offer-listing/B000064EUY/ref=sr_1_olp_1?ie=UTF8&s=music&qid=1244334810&sr=1-1
団体名が微妙に違いますが(^^;、DENONから出ています。出品側の誤記なのかもしれません。
投稿: 高橋 | 2009/06/07 09:36
高橋さん
ご友人への打診、恐縮です。
ご指摘のCDは曲目データ不詳ですが、
88年発売とのことですね。
探しているCDは90年代の発売なので
恐らく別物と思われます。
何せ、ボッケリーニの弦楽五重奏曲って
数十曲もあるというので・・・。
投稿: まこてぃん | 2009/06/07 23:08
友人からの追加情報です。
初期盤では?とのことです。
90年代の発売は、2版以降では?ということ
何とも..。
友人より
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旧盤の誤記でしょう。書誌データを転載します。
ボッケリーニ
CO-デンオン
33CO-2199 \3,100 88.4.21
【演奏者】
フィルハーモニアEns. ベルリン
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
(1)弦楽五重奏曲ホ長調G275
(2)同ニ短調G280
(3)同ハ短調G377
(4)同ニ長調G339
【収録時間】71M31S
投稿: 高橋 | 2009/06/08 06:44
高橋さん
追加情報ありがとうございます。
ご友人提供の書誌データを見る限り
旧盤CDで間違いないようですね。
早速注文しておきました。
どうもありがとうございました。
ご友人にもよろしくお伝え下さい。
投稿: まこてぃん | 2009/06/08 12:26