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2009/06/10

『破獄』

Hm024吉村昭作。図書館で借りた岩波の単行本(写真)は四六判339頁。持ち運びには重くて難儀した。現在では新潮文庫から出ており、その紹介文。

昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和22年札幌刑務所脱獄。犯罪史上未曽有の四度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。読売文学賞受賞作。(引用終わり)

6月 9日 ジョグ10キロ/完全休肝
6月10日 ジョグ10キロ/完全休肝

「あとがき」によれば、作者は「元警察関係の要職にあった方から、脱獄をくりかえした一人の男の話をきいた」とあるように、これは「昭和の脱獄王」と呼ばれ白鳥由栄(佐久間清太郎は仮名)という実在の人物の物語である。

作者の、そして小説の関心の大半は4度もの脱獄を果たした佐久間の到底人間業とは思えぬ手口にある。それだけでも十分に面白いが、その背景にある太平洋戦争前後の監獄の悲惨な状況が克明に描かれていて、佐久間の脱獄の動機が浮き彫りにされる。

ただ、佐久間自身の内面については詳細に描かれていない。最後に収容された府中刑務所長鈴江圭三郎のいわば「太陽政策」によって、彼は次第に脱獄する気力を失っていくのだが、彼の内部で何がどんな風に変わっていったのか、その辺りをもう少し踏み込んで書くこともできたかもしれない。しかし、それをあえてしないのが、また吉村昭らしいところかもしれない。

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