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2009/04/19

『カゼヲキル』

増田明美著。解説のみならず最近では著述業にも進出されているようである。1助走、2激走、3疾走の3部からなる長篇小説である。ラン友のTさんが貸してくれなければ、買って読むことはまずなかっただろう(苦笑)。版元紹介も3冊分である。

2141311_3 1助走
オリンピック経験者にしか書けない “走る” その頂を目指す探求心。
美岬・14歳・始動! リアルなマラソン小説、第1弾。
山根美岬は、タータンのトラックさえ走ったことがない、田舎の中学2年生。しかし、自然に鍛えられた天性のバネを密かに見込んだ男がいた。はたして美岬は、世界と互角にたたかっていける逸材なのか!? 才能豊かな仲間たちとの出会い。初めて芽生えたライバル心。そしてほのかな初恋。いつかきっと追いつきたい! 追い抜きたい!! アスリートとしての自覚と、勝利への執着心を得るまでを描く「助走」編。

2145161_42激走
オリンピックと併走する、増田明美のマラソン小説
経験者ならではの渾身のリアリティ!
2時間20分というレースのために、積み重ねられた時間は、10年以上!
長距離走の世界へ一歩足を踏み入れた美岬が、けがによる挫折を経てたどりついたのは、「やっぱり走りたい!」という強い気持ち。ライバルの恭子への闘争心がますます燃えあがる「激走」編。

2148191_33疾走
オリンピックへの道、そのすべてがここにある!
2時間20分というレースのために、積み重ねられた時間は、10年以上。
経験者ならではの渾身のリアリティで描きだす、迫真マラソン小説!
42.195キロ。そのスタートラインに立つまでに、何年もの時間を細い体で紡いできた選手たち。だからこそ、マラソンを人生に重ね合わせる方も多いのではないでしょうか。ライバルとの確執、鍛錬の日々、挫折、勝負の駆け引き……。主人公・美岬が、どのように女子マラソン五輪代表を目指し成長していくのか。美岬に伴走しながら、沿道から声援を送りながら、読んでいただければ幸いです。――増田明美

特集ページ
http://shop.kodansha.jp/bc/books/topics/kazewokiru/

(引用終わり)

4月18日 完全休養(休日出勤のため)
4月19日 LSD20キロ

版元紹介でほぼ紙数が尽きた。というのは冗談だが、小説としては主人公・美岬の成長物語を主軸として、それに家族、友人、ライバル、指導者などが絡むという、スポーツ小説の定番とも言うべき構成である。軽妙なユーモアを交えた文体とも相俟って、連載コミックでも読むように気軽に読める。

もちろん、本職の作家ではないので、意表を衝く伏線とか微細な心理描写など望むべくもないし、語り手の客観的叙述と登場人物の主観とがごちゃ交ぜになったりする部分も散見される。

そういうところは目を瞑っても、元五輪代表選手にしか書けないランナーの心理、練習の厳しさ、レースの駆け引きといったところにこそ、この小説の値打ちがあると思う。ドーピング検査の採尿方法なんて、誰でも書けるわけではない(笑)。詳細に書かれている練習メニューもランナーとしては非常に参考になる。

ところで、美岬は著者自身の若い頃なのかというと、著者の出身地が千葉県岬町だったという以外にもかなり該当する部分はあるものの、全面的にそうだというわけではないようである。その証拠に、解説者牧田明子なる人物が登場する。

「そうそう、この牧田明子さんはね、昔、女のマラソンが始まったばかりのころ、小さい体で大きな外人さんといっしょに走ってたんだよ。チェックの鉢巻きをしてね。そりゃー日本中で応援したもんさ。オリンピックじゃ失敗しちゃったけど、テレビに出るようになってからきれいになったね。牧田さんの解説はとにかく選手に対して優しいんだよ。声もいいし、わたしゃ大好きだよ」(2巻31頁)

ちょっと言い過ぎの部分はあるが(笑)、それ以外にも、「昔マラソン界の大スターだったが、監督としてはイマイチ」の瀬山利雄とか、初マラソンとなった大阪国際の終盤でフラフラになり長居競技場で何度も転倒した福川かおりとか、マラソンファンならよく知っている人物が出て来て面白い。

最後にトリビアをひとつ。増田明美の成田高校、川鉄千葉を通しての指導者だった瀧田詔生監督は、俳優の滝田栄の実の兄だそうだ。知らなかったなあ。

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