『楽園』
宮部みゆきの本を読んだのは、このブログ開始当時の『模倣犯』以来だ。07年8月初版の本をようやく近くの図書館で借りることができた。版元紹介。
宮部みゆきさんの『楽園』がいよいよ刊行です。この物語には、あの『模倣犯』の中で大活躍したフリーライター・前畑滋子が再び登場。現在はフリーペーパーのライターをしている滋子のもとに、萩谷敏子という女性が現れます。事故で死んだ12歳の息子が、実は予知能力を持つ超能力者だったかも知れないので、その真偽を調べて欲しいという依頼でした。彼は16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、自分が描いた「絵」で予言したというのです。
敏子の亡き息子への強い思いを感じた滋子は調査に乗り出しますが――。宮部ミステリーを存分に楽しめる上下巻です。(KT) (引用終わり)
3月30日 ジョグ10キロ
3月31日 休養/完全休肝
月間走行距離 356キロ
アマゾンの書評ではそれほど評判が良くない。確かに滋子の推理が悉く的中するのはいかにも不自然に感じられるし、当初のメインテーマである死んだ少年が描いた絵の謎の解明よりも、絵が暗示する16年前の少女殺しの真相究明の方に、なし崩し的に物語の重点が移ってしまうのは違和感が残る。
滋子が関わった『模倣犯』の犯人のアジトとなった山荘の絵も少年は描いていたが、その謎については最後まで触れられることなく終わってしまっている。終章の最後で初めて登場する人物のエピソードもいかにも蛇足の感が否めない。
しかし、おそらく新聞連載ゆえと思われるそうした瑕疵をカバーして余りあるほど、作者のストーリーテリングのうまさは冴え渡っている。とても創作とは思えぬディテールの綿密さ、チョイ役に至るまで登場人物全てについての克明な人物描写と心理描写。東京の下町を舞台に繰り広げられる、人情の機微に満ちた奥行きある人間ドラマは、まさに「宮部ワールド」全開といった感じである。
ミステリーというより、むしろエンターテインメントとして読めば、さほどの不満はない。
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