『神の領域』
著者独特の「ド真ん中、直球」の展開で、例によって事件の全貌は途中で大体見当がつく仕掛けとなっている。城戸の闘いの相手は前に読んだ『キング』にも出てきた、陸上競技に限らずスポーツ界全体を覆う「闇」である。
鳴沢が自らの性向に通じるものを感じ取ったとおり、城戸は思い立ったら行動あるのみの熱血漢で、まさか検事がここまでやらないだろうという囮捜査まで敢行して上司から諌められる。そう言えば、NYに単身赴任中の妻・藍子は、鳴沢の恋人・優美を想起させる。また、鳴沢の相方・今(こん)刑事に負けず劣らず、城戸の助手を務める事務官・大沢直人もなかなかいい味を出している。
命の恩人との対決となるホロ苦いラストに向けて、やや引っ張りすぎた感があり、その割に最後がやや尻すぼみのようになったのは残念である。同じく陸上競技を題材にした最新作『チーム』に期待しよう。
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