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2008/10/09

『ラン』

Run森絵都著。元々は児童文学出身の作家で、児童文学が主力の理論社刊というのも頷ける。ランナーとしては当然ながら題名に惹かれて読んだのだが、マラソンを題材にしたスポーツ小説を期待する読者は相当に裏切られることになる。版元の紹介文。

夏目環は家族を亡くし、途方もなく大きな喪失感を抱えて生きる22歳の女性。環がある日、愛用の自転車「モナミ一号」を走らせたその先に待っていたものは―?(引用終わり)

以下、若干ネタバレあり。

10月8日 ジョグ10キロ
10月9日 ジョグ10キロ

環にとって走ることは目的でなく手段である。交通事故で一度に亡くなった家族と幽界で会うためには40キロの道のりを越えなければならないのだ。風変わりなランニングチームに入ってトレーニングに励むようになる環だが、大きな目標としていたフルマラソンの完走が家族との永遠の別れ(現世では既に別れているけれども)をもたらすという皮肉な運命が待ち構えている。

それは悲しいことではあるけれども、死者が辿らなければならないプロセスなのである。亡くなった人間が次第に性格が丸くなり「溶けて」いって、最後には水や空気や穀物など大自然の一部に還っていくという叙述は、東洋的な輪廻転生の思想をとても分かりやすく提示してくれる。

一見荒唐無稽なSFファンタジーのようでいて、また主人公と「寄生ババア」との掛け合いなどコミカルな部分もあるが、実はなかなかに深い内容を持つ小説と言えるだろう。輪廻転生ではないけれども、死者との交流がテーマという点で、映画『フィールド・オブ・ドリームス』や『シックス・センス』を連想させる。

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コメント

私が読もうと思って買ってきたのですが、
うちのおねえちゃんに先に読まれて、
お父さん、読まないほうがいいよ。って言われたので読んでません。
やはり娘もお父さんのランとは関係ないと思って進言してくれたんでしょうね。

ちなみに夏休みの読書感想文、これで書いたようです。

投稿: ゴン | 2008/10/10 13:41

まこてぃんさんの読書域がついに森絵都さんにまで!と思ったら題名に惹かれたんですね。私は彼女の作品を3冊読みましたがいつも同じ空気が流れています。飛行機内で読むのにいい感じですね。
もうすぐNYCMです。

投稿: ともちゃん | 2008/10/10 20:38

ゴンさん
娘さんに取られちゃいましたか。(笑)
マラソン話も少しだけありますよ。
謎のコーチ(皇居15分以内!)の
アドバイスなど結構よく取材してます。
お父さんも是非読んでみてください。

ともちゃん
お久しぶりです。
森絵都って全然知らずに題名だけで
借りました。(笑)
『カラフル』とかも面白そうですね。
今年もNYですか。いいなあ。
大いに楽しんできてください。

投稿: まこてぃん | 2008/10/11 08:04

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