『大延長』
堂場瞬一著。刑事・鳴沢了シリーズは図書館の本がなかなか帰ってこない。痺れを切らして自腹で購入した前作は読後、日頃の感謝を込めて図書館に寄付した(笑)。次作が戻ってくるまでの間は今回もスポーツ物で繋いだ。もともとこの著者はこのジャンルでデビューしたのだ。版元紹介。
「最後に勝つのは あいつか、俺か──」
初出場でありながら、大会屈指の好投手を擁して勝ち上がった、新潟の公立進学校・新潟海浜。甲子園の常連で、破壊的な打撃力を誇る、東京の私立・恒正学園。両校間で行われた夏の全国高等学校野球選手権大会・決勝戦は、延長15回の熱闘に決着がつかず、優勝決定は翌日の再試合に持ち越された。監督は大学時代のバッテリー同士で、海浜のエースとキャプテン、恒正の四番バッターは、リトルリーグのチームメート。甲子園球場に出現した奇跡の大舞台で、互いの手の内を知り尽くしたライバルたちの人生が交差する。エースの負傷欠場、主力選手の喫煙発覚など、予期せぬ事態に翻弄されながらも“終わらない夏”に決着をつけるため、死闘を続ける男たちの真摯な姿、<甲子園優勝>をとりまく数多の欲望の行方を俊英が迫力の筆致で描く、高校野球小説の最高傑作!(引用終わり)
以下、ややネタバレ。
6月19日、20日の練習内容 完全休養
高校野球地方大会に向けたニュースが紙面を賑わせる時期になった。プロ野球に比べ高校野球にはそれほど関心がある方ではないが、娘が通っていた高校が常時県ベスト4に入る強豪校だったり、息子の高校が21世紀枠の候補に入ったりとかで、多少は身近になった。関東の某高校野球部監督のラン仲間もいる。
さて、本書である。小沢信一画のカバーのイラストはとてもよく描かれていて、夏の甲子園特有の熱気と歓声、時折吹き抜ける爽やかな浜風まで感じられるようである。小説の内容もそれがそのまま当て嵌まるような快作である。
野球の試合で本当に面白いのは、8対7とか9対8ぐらいの試合だというが、連日の延長戦となった決勝再試合は二転三転のシーソーゲームを繰り広げ、いつ果てるともない。試合の終盤、両校の監督がこんな感懐を漏らすあたりが、この小説のクライマックスだ。
白井「野球は面白いな。こんなに長く試合ができるなんて、幸せだよ」
羽場「野球は面白いよな。もう少し楽しませてくれ」
そのままで余韻を残して終わってくれれば良かったのに、野球マンガみたいな結末の「エピローグ」は明らかに蛇足である。何しろ、それを地で行くような2001年の近鉄の優勝シーンを目の前で見ているのだ。「プロローグ」に仄めかされている内容だけで既に十分である。
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