『覆面作家の愛の歌』
3篇中では全体の半分の紙数を占める標題作が、複数の電話機を使ったトリックを題材にして、「日常の謎」を超えた本格的推理ものの面白さに満ちている。ただ、最後の千秋誘拐劇のドタバタはちょっと余計な気がした。
ところで、著者自身も当初は「覆面作家」として東京創元社だけに書いてきたのが、ある日どうやって調べたのか角川書店の編集部員から職場に電話がかかってきて、遂にはこのシリーズが登場することになったという経緯が、本書「あとがきにかえて」で紹介されている。
本シリーズでは、新妻千秋を発掘した雑誌『推理世界』に対抗して、『小説わるつ』編集部の静美奈子という女性編集部員が千秋に接触を試み、いつの間にか千秋の謎解きに深く関わっていくようになるのだが、この角川の編集部員がモデルになったのではないかと思われる。
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