『夜の蝉』
前作に続いて「日常の謎」をテーマにした3篇を収める。本屋のあるコーナーで一部の本が逆向きに並べられていたのはなぜか。チェスのクイーンの駒はなぜ冷蔵庫に隠されていたのか。歌舞伎のチケットを恋人に送ったのに、そこに座っていたのは恋敵だった・・・。
『空飛ぶ馬』と比べて一篇一篇が少し長くなり、それだけに入念な伏線が張られていて、内容が濃くなってきた。主人公と同様、巻を追うごとに成長していく物語なのかもしれない。古今東西の文芸作品の引用は相変わらずだが、多少慣れてきた。本筋とあまり関係ない場合が多く、無視しても差し支えないのだ。(笑)
表題作「夜の蝉」が、これまではっきりしなかった「姉」の人となりや「私」との関係の変容に触れていて、しみじみとした味わいがあった。
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