『中年シングル生活』
関川夏央の3冊目。垢抜けた表紙デザインから生活ノウハウものの一種かと予想していたが、今回も気持ちよく裏切られた(笑)。版元紹介はあまりに素っ気ないので「あとがき」の抜粋を。
ひとりで生きるのはさびしい。しかし誰かと長くいっしょにいるのは苦しい。そういうがまんとためらいに身をまかせてあいまいに時を費し、ただただ決断を先送りしつづけてこうなった。(中略)
不幸でもなく幸せでもなく、同時につまらなくなくもない中年的シングル生活の実情を、自信と痩せがまん半々にしるそうとした。少しずつ迫ってくる老化にやや困惑しつつも必ずしも希望を失わず、いわば泣き笑いの顔でユーモア読物を書いてみたかった、そういうことである。(引用終わり)
10月10日の練習内容 完全休養
10月11日の練習内容 インターバル(1キロ×8本)を含む12キロ
1993年から1996年にかけて日本経済新聞と雑誌IN-POCKETに連載された掌篇60余を収める。身辺雑記的なものや、書物、映画の感想など題材は種々多様だが、上記抜粋にあるように、老年期そしてやがては死に向かう入り口に立つ中年という人生のステージでの「泣き笑い」が、全篇にわたって通奏低音のように響いている。
最後の「昔知った物語」に、鶴田浩二主演のNHKドラマ「男たちの旅路」が出てくる。1970年代後半に何回かシリーズで放送されたもので、私自身も当時観て強い印象を受けたドラマだが、次のような指摘には唸らされる。
このドラマがつくられたときわたしは二十七歳だった。むしろ水谷豊の側に気分の重心を置いて見ていたのに、なんの努力と意欲もなしに、二十年たつと自動的に「不自然で、薄汚ねえ」年齢に自分が達して、我知らず鶴田浩二の立場に身を移しているのが不思議だ。残酷ともいえる。
歳を取るとは、老化とは、つまりはこういうことなのだ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント