『泳いで帰れ』
紹介にあるとおり、作者が何と直木賞の授賞式をパスして駆けつけたアテネ五輪の観戦記である。版元の厚意でエールフランスのビジネスクラスで成田を発つところから始まり、アテネの異常な暑さに閉口しながらも各種競技を気ままに見てまわり、合間にはエーゲ海クルーズも楽しんだという文字通りの「物見遊山」が羨ましい。
以前に読んだ『延長戦に入りました』でも明らかになった作者のスポーツ全般に対する関心、とりわけスポーツの周辺部に対する関心の深さはここでも遺憾なく発揮されている。応援ぶりに現れるそれぞれの国民の「お国ぶり」についての観察は、時に鋭い批判をはらむこともあるが、根底にはこの作者らしい人間に対する温かい眼が注がれている。
ところで、本書のタイトルはバントを多用した「長嶋ジャパン」野球チームの作戦に対する批判を籠めたものである。日本のマスコミのフィルターを通してしか五輪を知ることができなかった人間にとっては思いもつかない感想である。結局、スポーツも自分の眼で現場を見るしかないのだと思い知った。
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