『第三の時効』
『陰の季節』でもそうだったが、今回も「犯人対警察」という単純な図式ではなく、むしろ警察内部の権力抗争とか人間関係の綾で読ませる作品群である。F県警捜査第一課強行犯係は一班朽木、二班楠見、三班村瀬のいずれも強烈な個性をもつ各班長に率いられた最強軍団だ。当然、お互いの対抗意識は凄まじい。
それぞれの短篇では各班の誰かが主役を務めるものの、常に他の班の動向が陰に陽にストーリーに絡んできて、6篇全体が立体的な構造をなしているところが、この連作集の見事なところであろう。中でも二転三転の鮮やかな結末に舌を巻く標題作「第三の時効」が傑作だと思う。
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