『ヴァイオリニストの音楽案内』
高嶋ちさ子著。以前、朝日新聞夕刊のリレーコラム「なまねた」で毎回ユーモアあふれた文章を書いていたのが記憶に残っていて、ある人のブログでこの本のことが取り上げられていたので読んでみた。版元紹介。
お茶の間で人気の女流ヴァイオリニストによる、初心者のためのクラシック音楽入門書。バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンからショパン、ブラームス、バーンスタインまで、著者自身が大好きな曲を中心に50曲を厳選。アメリカのオーケストラに所属していたときの経験や、現在のソロ奏者としての立場から、豆知識や裏話を交えてユーモアたっぷりに紹介する。音楽評論家からはけっして聞くことができない本音の名言、迷言が満載! 読めばクラシック音楽がもっと身近になること間違いなし!! (以下、収録曲目は略。引用終わり)
4月28日の練習内容 ジョグ12キロ
軽妙でテンポのいい語り口に、ほとんど一気に読み終えた。口語調というか、携帯メールのような文体で、文末には顔文字やハートマークなどが多用されている。この人にかかると、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」も次のように形無しの有様だ。
この曲の唯一気に入らないところをあげるとすれば、いちばん最後。終わるのかな、とまず一回目に思うところから立ち直り、そこから二分かけて終わりに近づきます。そしてやっと終わったかと思うと、それもまたフェイント。「しつこい男だね、何回やれば気がすむんじゃい! あんた、だから女にもてないんだよ」と、あの世で会ったら言いたい。(31頁)
確かに言われてみればこの終楽章のコーダはいかにも長すぎる。第8番ヘ長調のそれも無駄に長いが、あれは半分冗談みたいな感じだからいいとして、第5番では第1楽章の緊密な構成から比べると、あの緊張感から解放された反動が出た、みたいなところは確かにある。「しつこい男」かどうかは別にして、妙に納得させられてしまった。
自他ともに認める男勝りな性格と単刀直入な口調で、要らぬ誤解を生みかねないけれども、彼女が書いていることは意外にそれぞれの曲の本質を鋭く突いているような気がしてきた。
最後にひとつお笑いを。
長年、老若男女に愛されている時代劇といえば『水戸黄門』。オープニングのテーマ曲どっかで聴いたことあるし、なんかに似てるんだよね~なんて子供のころ思ったんですけど、それがなにかはこの《ボレロ》を聴くまで思い出せませんでした。(97頁)
そう、確かに同じようなリズムの繰り返しだ。電車内で読んでいたので、笑いを堪えるのに必死だった。
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